(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第826話:今後の方向性 その2

コラム一覧に戻る

2025年4月22日

***********************************************************
2026年卒獣医師採用について

(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)は、獣医師を募集しております。詳細はこちらをご覧ください。
獣医さんの卵である大学6年生で就職を考えている方がいらっしゃったら是非実習に来てください!お待ちしております!
***********************************************************
 
今回のコラムでは牛肉の需給事情の変化について紹介いたしますね。

【 産出額と消費動向の推移 】

 • 肉用牛の産出額は、平成25年(2013年)の5,189億円から令和5年(2023年)には7,696億円に増加し、約1.5倍になった。
 • 食肉全体の一人当たり消費量は、魚介類消費の減少や食生活の欧米化により中長期的に増加傾向。
 • 牛肉消費量も長期的には増加していたが、コロナ禍や物価高騰の影響で、安価な豚肉・鶏肉に需要が移行し、令和3年度以降は減少傾向。

【 生産構造の変化 】

 • 枝肉価格の高騰(H27〜R3)を受けて、肉用牛の生産基盤が拡大。
 • 乳用雄牛は減少したが、黒毛和種精液や受精卵の活用により和牛・交雑種が増加。
 • 和牛は好調な子牛価格(H28〜R3)を背景に出生頭数が増加、今後2~3年間はと畜頭数の増加が見込まれる。

【 枝肉価格の傾向 】

 • 和牛枝肉価格は、供給過剰と消費減退の影響で弱含み(軟調)。
 • 交雑種・乳用種の価格は、輸入牛肉の減少(円安・現地価格上昇の影響)により、国産としての値頃感から堅調に推移。

【 輸出の拡大 】

 • 牛肉輸出は順調に伸び、2024年は36の国・地域に10,826トン・648億円を輸出し、いずれも過去最高。
 • アジア向けにはフルセット、欧米向けには高級部位(ロイン)が輸出されている。
 • ただし、国内生産量に占める輸出割合は約3%にとどまり、今後も拡大の余地あり。

【 消費ニーズの多様化と品質の高度化 】

 • 消費者の嗜好は「霜降り」一辺倒から、「適度な脂肪交雑」や「赤身重視」などへ多様化。
 • 和牛の格付割合は5等級67%、4等級24%と、4等級以上が全体の9割を超える高品質状態。
 • 和牛産地では、「脂肪酸組成によるブランド化」や「早期出荷による適度な霜降り肉生産」などの取り組みが進行中。

現在の状況を「国」は上記のように認識しております。どの項目も小生が日頃見聞きしている現状と大きく変わりません。今後の展開としては、まだまだ牛肉消費の改善は厳しいものがあると考えています。特に高品質牛肉の取り扱いが非常に難しいのではないかと思います。では今後「国」はどのような対応をして肉用牛の政策を進めていくのか。大まかな流れを把握しておくことは非常に重要だと考えるので、以下にまとめておきますね!

≪ 国の今後の対応方向について ≫

【 消費者ニーズへの対応 】

 • 和牛の強み(霜降り)は維持しつつ、「オレイン酸などの食味関連形質」や「霜降りの形状(小ザシ)」など新たな評価基準で改良と価値訴求を行う。
 • 科学的根拠に基づく品質評価を関係者と共有し、適度な脂肪交雑や短期肥育(早期出荷)の取り組みを推進。
 • 交雑種・乳用種牛肉の需要拡大にも力を入れ、多様な国産牛肉の供給体制を整備。

【 輸出拡大の取り組み 】

 • 認定団体が中心となり、「オールジャパン体制」で認知度向上と商談支援を実施。
 • 生産者・処理施設・輸出事業者が連携し、輸出向けの新たな商流構築・販売網拡大を図る。
 • ロイン以外の部位(カタ・バラ・モモ等)の調理法教育・活用促進、ブランド化の推進。
 • 和牛の統一マークや個体識別番号を活用した、日本産牛肉の差別化と信頼性強化。
 • 人手不足に対応する非併設施設の整備・認定の迅速化を推進。
 • ハラール対応(イスラム市場向け)に向け、機械導入やと畜人の確保のための入国制度の整備を関係省庁と協力して実施。

今後の対応方向を読むと、「多様化」と「輸出拡大」がやはり大きな柱のように思います。オレイン酸などのMUFAが枝肉評価の基準となることは知っていたのですが、小ザシが評価基準に含まれる可能性については、小生は知りませんでした。これは今までにない面白い基準であると思いました。

配合飼料価格高騰などの影響から、肥育期間の短縮も大きなポイントとなっています。今までと同等以上の成績を短期間で作り上げる。この目標に向かって様々な取り組みを行っている農場も多数あります。自分たちの手で変えることができることはなかなかありませんが、ここのポイントについては頑張ればできる目標です。検討する価値は大いにあると思います。

輸出に関してはもう、頑張っていただくしかありません。小生は間違いなく世界に大きな需要があると確信しております。難しい問題が山ほどあると思いますが、官民あげての取り組みを期待しております。国内生産量に対する輸出割合まだ3%です。ここの数値が上がってくればまた少し状況はかわってくるのではないでしょうか。

とは言ってもですね・・・
毎日小生が生きているこの世界は、どこも切羽詰まっています。
現状も方向性もわかる・・・
ただ、こっちは今それどころではないんじゃ。

そんな感じです。
 
 
今週の動画
牛の視力検査

|