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戸田克樹のコラム
第485話「消毒薬は何がいい?⑤」

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2025年4月17日

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牛舎消毒は基本的に逆性石けんで問題ないことを前回のコラムでお伝えしました。では、逆性石けんでは対応できない状況を次に考えてみましょう。

① エンベロープのないウイルス
特に哺乳期子牛の下痢において非常に厄介な病原体であるロタウイルスは残念ながら逆性石けんでは殺菌できません。もし、子牛の下痢の原因がロタウイルスだった場合は塩素系やヨード系など、他の種類の消毒薬で牛舎消毒を行う必要が出てきます。また、ロタウイルスの場合は母牛に投与するワクチン(牛下痢5種ワクチン)もありますので、そちらの使用も有効です。

② 芽胞菌
牛で問題になる芽胞菌といえば炭疽菌やクロストリジウム菌(破傷風菌やボツリヌス菌)です。これは致死性が高い毒素を分泌するだけでなく、環境中では酸、アルカリ、紫外線、さらには熱にも強い(100℃の沸騰水につけても数分は耐えられます)芽胞という硬い殻で自身を覆ってしまうためほとんどの消毒薬の効果がありません。もし、死亡した個体の組織やその糞便から芽胞菌が検出された場合、牛舎消毒はアルデヒド系の消毒薬が推奨されます。生体への使用は不可ですが、オールアウト後の畜舎の床面や使用前のハッチへの散布は可能です(消毒剤の散布が難しい場合は、敷料交換を行い物理的に芽胞菌を除去する方法、バーナーなどの利用による火炎滅菌という方法もあります)。

③ コクシジウム
コクシジウム感染による下痢や血便が多発している農場では使うべき消毒薬はオルソ剤となります(石灰乳による病原体封じ込め作戦も有効です)。ただ、一般的には多量のコクシジウム虫卵が確認された場合は、消毒よりも早期の敷料交換がマストです。環境中の虫卵を減らさないことには再感染でいくら治療しても治らないし感染は拡大する一方だからです。まずは一度敷料交換を実施し、その後にオルソ剤による畜舎消毒を行った方がよいでしょう。

つづく
 
 
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