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橋本匠護のコラム
早期妊娠鑑定による経営的なメリット

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2025年4月4日

現在、妊娠鑑定には様々な方法があります。授精後の発情回帰を観察するノンリターン法、直腸検査(触診)、超音波検査、妊娠関連糖タンパク質(PAG)を検出する方法などなど・・・。

この中でも超音波検査やPAGを検出する方法は授精後30日前後から鑑定が可能で、現場においては非常に重宝されています。ではなぜ早いタイミングでの妊娠鑑定が良いとされているのでしょうか。それは不受胎牛を早期に摘発することで、次の授精を行うことができ、空胎期間の短縮 ▷繁殖効率の向上 ▷経営の改善へつなげることが出来るためです。

例えば授精後35日頃に不受胎牛を摘発することができれば、数日後に2周期目の発情がくる可能性が高いため発情観察に注意することができます。良い発情が来た場合、そのまま授精をすれば最小限の時間および経費のロスで済みます。

では空胎期間が延長すると、どの程度の経営的な影響があるのでしょうか。ざっくりと計算してみます。まず考えなければならないことが餌代を含めた管理費用です。また空胎期間の延長で、出荷できる子牛の頭数が減ることによる損失も考えなければなりません。極端な例だと、1年1産の農場と2年1産の農場を比較すると、2年間で子牛1頭分の差が出ているため大きな損失となります。この2つの要因に絞って、分娩間隔が1日延長することによる母牛1頭あたりの損失を計算したものが以下になります。(生後250日での出荷で計算しています。)


↑分娩間隔1日延長で母牛1頭あたりのざっくりした損失

例えば一日の管理費用が500円で子牛の相場が50万円の場合、空胎期間が1日伸びると母牛1頭あたり2500円(=500円+500,000円/250日)の損失となるということです。もし1周期分遅れる、もしくは数頭が遅れれば更に大きな損失になります。あくまでざっくりとした計算ではありますが、インパクトのある数字ではないでしょうか。また逆にいうと空胎期間を短縮することができれば経営にとってプラスになる可能性が高いということです。

そこで空胎期間を短縮する上で武器となるのが、早期での不受胎牛の摘発というわけです。特にPAGの検出による妊娠診断は、採血ができれば特殊な装置や手技を必要としないため良いのではないかと思います。一方で妊娠早期での鑑定で妊娠が確認された場合でも胚死滅により妊娠が維持されないことがありますので、再鑑定が必要な点は注意です。

PAG検査の方法は弊社youtubeで過去に紹介しておりますので、そちらもぜひ御覧ください。


 
 
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