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松本大策のコラム
「地震お見舞いとストレス対策」

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2008年6月16日

 岩手・宮城内陸地震に遭われた皆様、本当に大変な被害でしたね。目に見える畜舎や人家の被害だけでなく、牛さんもなにがなんだか解らずに大きなショックとストレスを受けたことと思います。
 こういったストレスの被害を少しでも軽くするにはどうしたらよいのでしょうか?まず、生き物はストレスを受けると脳で防衛のためのいろんな指示を出します。しかしながら、これが適切でなかったり、過剰であったりした場合、免疫抑制や消化管内などで毒物が作られるなど、さまざまな障害を起こすことがあります。
僕の住んでいる九州では、台風のあとのストレスから第一胃で作られるエンドトキシンが原因と思われる「足の腫れ」や「ズル」が増加する例が、しばしば見られます。
 こうしたストレスを予防するには、牛さんの場合おおきく3つの段階に分けて考えることが出来ます。まず、「受けたストレスを軽減させる」段階、次に「ストレスによる腸内細菌の乱れを抑える」段階、最後にストレスで発生した「いろんな毒物を除去する」段階です。
 まずはモラフィットなどの設置でストレス軽減を図り、また声をかけたりして落ち着かせます。モラフィットにはGABAという鎮静効果のあるアミノ酸が含まれていて、ストレスがかかった時の過剰なホルモン分泌を防止する働きがあります。また、アースジェネターなどの生菌剤は、かねてから与えておくことで、ストレスを受けた時の異常行動が減少する、という実験がネズミで確かめられています。次に生菌剤やトルラ酵母などの発酵調整剤で第一胃の発酵を整え細菌のバランスを崩さないようにします。ある試験では、ストレスを受けて、たった15分で腸内細菌が乱れてしまう、という結果も出ています。最後に、ストレスを受けた時にでてくる消化管内のエンドトキシンなどの毒素を吸着させるためにウルカルやゼオライト、ソフトシリカなどの吸着剤と、ストレスで体内で作られる活性酸素という毒物の除去のためにビタミンEやエムリングなどを給与してあげると安心です。
 余震の続く中、なかなか大変かも知れませんが、とりあえず手元にある物からでも利用してストレスを防止してあげると、後々の苦労が少なくなると思います。
 最後ですが、何かシェパードで出来ることがあればご意見その他をお待ちしています。
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