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蓮沼浩のコラム
第813話:雄を生ませる

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2025年1月14日

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農家さん「先生~~~これ見て~~~~」

ハス「お!!かわいい子牛が生まれていますね~!ただ・・・少し小さいかな??」

農家さん「体重は20㎏台のメスです~~~」

農家さんはシュンとして元気がありません。せっかく無事に子牛が生まれたのに何故?

その原因はと言いますと、以下の表になります。

そうです。雌の方が去勢と比べて値段が低いのです。平均価格を比べると、雌と去勢の価格差は年々広がり、令和5年度のデータでは\119868も違います。おまけに40万円前半なので、メスが生まれておまけに小さいと非常に経営にとって厳しい状況となります。生まれた瞬間に「赤字確定」という事態も多々あります。

資本主義と農業は本当にバランスをとるのが難しいです。「神の見えざる手」、つまり市場原理にすべて任せると、とんでもないことになってしまいます。

このあたりの話となると、田舎鼻糞獣医師にはもうお手上げの状況です。しかし、農家さんによってはこのような中でも果敢にチャレンジしていらっしゃる方々もいます。

それは何かといいますと・・・・

意識してオスを生ませる努力をしているということになります。

乳牛の世界では雌雄判別精液が席捲しております。この判別精液のおかげで、オスが生まれる確率は非常に低くなっています。乳牛の世界では搾乳する後継牛を作るためにオスではなく、メスが生まれてほしいのです。ただ、肉用牛の世界では一部では雌雄判別精液が始まっていますが、まだまだそこまで広がっていません。

昔から色々と産み分けの技術があります。とくにメジャーなのが、重曹の添加。そして授精のタイミング。

農家さんの中には母牛に重曹の固形塩を与えたり、重曹粉末を餌に混ぜたりしていらっしゃる方もいます。また、授精のタイミングを意識して早めている方もいらっしゃいます。受胎率は落ちるけど、雄を生ませるために意識して取り組んでいらっしゃいます。

どれも科学的なエビデンスがあることではありませんが、小生がいろいろ見て、聞いてきた限りでは、結構使える技術ではないかと思っています。まずは年間生まれてきた子牛のオスとメスの比率を数年分出してみて、色々とトライしてみるのも面白いのではないでしょうか。

ただ、せっかく元気に生まれてきたのにがっかりしてしまう状況。獣医師の小生としては、何ともいたたまれない気持ちになってしまいます。

最近は如何ともしがたい切ない風が、小生の胸をビュービュー吹いています。メシ食って寝よ。
 
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三つ子

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