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戸田克樹のコラム
第468話「生殖器の奇形①」

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2024年12月5日

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 「メス牛の生殖器の奇形」と聞くと、皆様はまず何を思い浮かべるでしょうか。一番メジャーなのはフリーマーチンではないかと思うのです。そして、似たような生殖器の奇形に「ホワイトヘッファー」というものが存在しています。似てるけど違う・・・今回はそんなふたつの病気を比較しながらおさらいしてみます。

 フリーマーチンの特徴といえば、「遺伝子レベルでオス化している」という点です。異性双子の胎膜血管がくっつき、血液が互いに流入し合った結果起こる奇形です。メスであるにも関わらず、オスのY染色体が入ってくるために生殖器の発達異常が起こります。外見上問題がないこともありますが、陰部が小さい、膣長が短い、卵巣の未発達(卵巣自体が触知できないことも)、陰核の肥大、陰毛が包皮先端のような長い房状、などのような外観を示すこともあります。卵巣や子宮などのメス性生殖器がオス化することでこうした異常が発生します。卵巣自体が異常なので、発情も来ません。「発情が来ないな~」と思って直腸検査を行って初めて発見されるケースもあります。もちろん、異性双子だから絶対にフリーマーチンになるとは限りませんが、その可能性は90%と超えているため、もし異性双子が生まれてきたらできるだけ早期に遺伝子検査を行い、フリーマーチンかどうかを確認した方がよいでしょう。

 ちなみに、フリーマーチンの名前の由来は聞いたことがありますか?諸説あるようですが、収穫祭の日と関わりがあるSt.Martin’s Day(聖マルティンの日)からつけられた病名という説を見かけました。収穫祭の日に、これから来る冬に備えて不妊のメス牛をと殺していたことからつけられたという説明が・・・。他にも、Free(繁殖性からの開放:free from breeding)とMartin(イギリスの家畜の愛称)とを足した用語だ、という説明もありました。本当のところは一体どうなのでしょう。Freeは分かりますが、Martinがなんともいえませんね。

つづく
 
 
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