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戸田克樹のコラム
第466話「妊娠鑑定しない派です②」

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2024年11月21日

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 ノンリターン法のデメリットはなんといっても「不受胎牛の見逃し」につきます。妊娠していなければ次回の周期で発情が来るはずですが、実際の現場では発情が確認されないことがあります。例えば「産後の初回発情がとてもよかった。次の周期でつけようと思っていたのに、それからは発情が見られない。」という話や、発情が来てないからタネはついてるでしょ!えっ?子牛いない?それって不受胎ってこと???」というセリフを妊娠鑑定の際に耳にした経験が少なからずあるのです。

 さらに、この方法で受胎・不受胎を判断するにはとてつもない「観察力」が必要です。発情時期であろう牛のささいな行動の変化、陰部の状態、同居牛の様子などをしっかりと見る目がないといけません。また、牛をじっくりと観察する時間を設けていることも必須条件です。センサーの情報しか確認しない、あるいは1日1回しか牛群を観察しない、というような状況では、牛が示す微妙なサインを見逃してしまい「発情が来ていない」と判断してしまう可能性が高いです。実際、鑑定で受胎が確認された牛であっても「予定日過ぎても生まない」という連絡を受けて確認したら不受胎だった(どこかで流産しており、その後も発情がずっと確認されなかった)というケースに遭遇したことがあります。こうなると、それまでの管理費や労力が無駄になるだけでなく、精神的なダメージも大きいです。それだけ、牛の発情サインだけに頼るのはリスクがあるともいえるのです。


(これだけ分かりやすい状態だと見逃しもないのですが・・・)

 やはり、「前回AIした次の周期で発情が来ていない」という情報は、あくまで補足的なものとして捉えた方がよいのではないでしょうか。発情が来ないときは「ちょっと期待できるかな」くらいの意識で獣医師などに鑑定を依頼しましょう。当たり前のことなのかもしれませんが、エコー検査や直腸検査などで受胎・不受胎をしっかりと確定させることが繁殖牛の管理では非常に大切なことなのです。
 
 
今週の動画
胎膜スリップのイメージを掴みたい

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