(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「繁殖障害と肝臓の不調 その1」

コラム一覧に戻る

2008年5月12日

 みなさん繁殖障害というと、まず最初にホルモン剤による治療を思い浮かべると思います。それから給与飼料の改善でしょうか。
 これらの処置は確かに効果があるのですが、もしもこれらの処置で効果が得られない場合、お母さん牛の肝臓の不調も疑ってみてください。というのも、肝臓はお酒のアルコールの分解だけでなく(牛は飲まないか)、繁殖のためにも大きな働きをしているのです。
 肝臓の繁殖に関する仕事の1つは、いろいろなホルモンの材料となるコレステロールという脂肪を合成することです。ホルモンは単独で作用を現すのではなく、1つのホルモンが別のホルモンの分泌を引き起こし、その新しいホルモンがまた別のホルモン分泌を誘発し...、というように連鎖反応的に働いていきます。ところが、肝臓が不調だとすべての性ホルモンの材料であるコレステロールが作れませんから、せっかく獣医さんを呼んでホルモン注射をしてもらっても、そのホルモンによって誘発される次のホルモンが足りないために連鎖反応が途中で止まってしまうのです。これではうまく繁殖サイクルが回るはずありませんよね。
|