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松本大策のコラム
「今回はカビ毒と繁殖のお話」

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2008年4月28日


 繁殖母牛を飼育なさっているみなさんは、当然よい発情が来て1回で受胎することを望んでいらっしゃると思います。しかしながら、繁殖というのは様々な要因が絡んで、微妙なバランスの上に成り立っているので、たとえば粗飼料の品質が悪いだけでも受胎率が低下しますし、濃厚飼料の与えすぎで受胎率が下がるケースもあります。
 濃厚飼料多給で受胎率が下がるのは、1つは太りすぎてしまうために、卵巣の活性が上がりすぎて、せっかく種付けしても次の卵(卵胞)が育ってしまい早期流産を起こすケースがありますが、この他にも濃厚飼料(穀類・豆類などですよね)の中に「エストロジェン」というホルモンに似た物質が含まれているため、お母さん牛のホルモンバランスが乱れるという現象が起こるのです。
 ですからお母さん牛には可能な限り良質の粗飼料を中心に給与するということが大切なのです。
 先ほどお話しした「エストロジェン」類似物質は、じつはカビの生えた飼料でも問題になります。というよりカビの作る物質は、より多く、より純粋なエストロジェンを含んでいるので、濃厚飼料多給よりも問題が深刻なのです。
 カビの生えた粗飼料の給与などは問題外ですが、一見カビが生えていないような粗飼料でも、見えないカビが生えている場合がけっこう多いのです。もしも「受胎率が悪いけど、他の原因が見あたらない」なんて場合は、粗飼料のチェックとウルカルやマイコ-AD A-Zなどのカビ毒吸着剤を添加することと、パンカルG散などの強肝剤を給与してみるのも効果があるかも知れません。
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