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戸田克樹のコラム
第457話「抗生剤って何がいいの?⑨」

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2024年9月19日

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 結局、細菌感染にはどの抗生剤を使えばいいのでしょうか。

 こんな質問に対しては、残念ながら「○○がいい」という回答ができないのが本当のところです。各牧場において、効果が高い抗生剤の種類は大きく異なります。ほとんどの抗生剤がよく効くところもあれば、逆に耐性化が進みほとんどの抗生剤が効かない牧場もあります。やはり、重要なのは「定期的な感受性モニタリング」と「抗生剤の使用頻度をできるだけ減らすこと」ではないでしょうか。感受性モニタリングによって効果の高い抗生剤を選抜できますので、効果が薄い薬剤の使用による治療日数の延長も防げるようになります。また、抗生剤の使用頻度を下げることで耐性菌発生の機会を減らすことができます。さらに、牛舎の消毒やワクチネーションの実施によって、治療そのものを減らせることができれば抗生剤の使用そのものを少なくすることができます。
 
 効果がある抗生剤を探すことも大切ですが、「効果がない」薬剤を抑えておくことも大切かもしれません。例えば、ペニシリン。細菌の細胞壁合成をジャマするこの薬剤は細胞壁がない細菌には効果がありません。大腸菌やマイコプラズマが細胞壁を持たない代表例です。こうした病原体は哺乳期子牛の下痢や中耳炎の主因とされるため、その病気の治療ではペニシリンは用いないようにしましょう。抗生剤変更のタイミングも大切です。基本的には3日程度投与しても改善がない場合は、それ以上投与しても効果はないと考えられます。3日目も変化がない場合は抗生剤変更を検討してみましょう。

 その次は何を投与すべきか・・・。できるだけ「異なる性格の抗生剤」を選択するようにしてください。例えば、ペニシリンなどの殺菌系の抗生剤を最初に使用していたとすれば、次はフロロコールなどの静菌系の抗生剤を使用するといった感じです。そうすれば、薬剤が作用する場所が異なるため薬を変更する意味がでてきます。薬の作用点が同じであれば、同じ薬を投与し続けるのとほとんど変わらないので注意が必要です。薬剤名が異なっても、成分が同じことがありますので説明書もよく見ておきましょう。
 
 
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