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戸田克樹のコラム
第455話「抗生剤って何がいいの?⑦」

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2024年9月5日

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 抗生剤の使用で感受性以外に大切なものは「患部に届いているかどうか」という点です。抗生剤は経口、皮下注射、筋肉注射などの投与方法で体内に入りこみます。その後、血管に移行し、全身を駆け巡り、血管から各組織に浸透し、患部で増殖した感染菌と接触して効果を発揮します。つまり、体内に入った抗生剤が患部で増殖している感染菌と接触できないと効果が発揮されないのです。

 感受性試験は培地に生える菌に対して行われる検査です。培地の上に抗生剤がしみ込んだタブレットを直接置くことでその周囲に菌が生えるかどうかを診る検査なので、菌と抗生剤が直接触れる環境がすでに用意されています。つまり、「抗生剤が患部に届いた」という前提の上に成り立つ検査なのです。臨床現場で感受性の高い抗生剤を使用しているのに効果が薄いと感じられる場合があるのは、薬剤が患部に十分届いていないことが原因かもしれません。


菌が生えた培地


ディスクを載せた培地

 とくに牛の病気で多い肺炎は外気と触れる肺胞が感染の現場となります。腎臓や肝臓などと異なり、病原体は血管から侵入してくるわけではないため抗生剤が肺胞周囲に無数にある小さい血管や肺胞の表面にまである程度の濃度で届かないといけません。肺に高濃度で届く薬剤の代表例はマルボシル、バイトリル、ビクタスなどに代表されるキノロン系の抗生剤です。もちろん他の薬剤でも呼吸器系疾患がきちんと治ることは多々ありますが、薬剤が高濃度で分布するという特徴を考慮して気管支炎や肺炎の際にはキノロン系の薬剤を選択することが多いです。
 
 
今週の動画
胎子の心臓の話

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