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戸田克樹のコラム
第454話「抗生剤って何がいいの?⑥」

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2024年8月22日

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 マイコプラズマ感染が疑われる場合には何がいいのでしょうか。基本的にはペニシリンやその兄弟分であるセフェム系以外は効果があるとされています。テトラサイクリン系、アミノグリコシド系、チアンフェニコール系などが挙げられます。しかし、マイコプラズマで問題になるのはその耐性菌の多さです。薬剤の説明書の有効菌種の欄にマイコプラズマと記載がされていても、検査を行ってみると耐性化が進んでいて効果がない、ということも少なくありません。マイコプラズマは遺伝子に変異を起こすことが多く、変異が起こる中で抗生剤の作用を無力化するものも出現しやすくなっています。
 耐性菌の発生を抑えるためには、定期的な薬剤感受性のモニタリングも大切です。検査費用がかかりますし、検査機関の協力も必要にはなりますが、牧場内で効果がある抗生剤を把握しておくことで、治療日数がより短くなり、重症化を防げるという大きなメリットがあります。一般的には鼻腔スワブ検査で牛の呼吸器から取れる細菌やマイコプラズマの種類を調べます。その後、薬剤感受性試験を行って「その牧場における感受性が高い抗生剤(今後使った方がよい抗生剤)と感受性が低い抗生剤(投与しても効果がほとんどないため使用を控えた方がよい抗生剤)」を確認することができます。
 そして、新たな耐性菌を生まないためにも効果がある抗生剤の投与はある程度続けることも大切です。「ちょっとよくなったな」という状態ですぐに抗生剤の投与をやめることはありませんか?そして、「数日後に症状がぶり返した」という経験はないでしょうか。この場合、十分に細菌が倒しきれておらず、残った菌が再び増殖し体の中で再び悪さをした可能性があります。そして、この残った菌こそが抗生剤の暴露を乗り越えた耐性菌である可能性が高いのです。「体調がよくなったからもう大丈夫かな」と思ってからさらに数日投与することで、完全に敵を倒しきる(耐性菌の出現を抑える)ことができます。もう大丈夫!と思っても、せめてあともう一日は抗生剤の投与は続けましょう。
 
 
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