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戸田克樹のコラム
第453話「抗生剤って何がいいの?⑤」

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2024年8月15日

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 エスカレーション療法、デ・エスカレーション療法という考え方について前回はご紹介しました。抗生剤をどう選択するかにおいて大切な考え方のひとつに「耐性菌の出現をできるだけ減らす」というものがあることも紹介しました。
 狭域スペクトルの代表選手にペニシリンが挙げられます。狭域であるがゆえに耐性菌の発生リスクが低いという特徴はありますが、それだけにとどまらない彼なりの強みもあります。それは、殺菌力が強いということです。広域スペクトルな抗生剤には細菌の代謝経路を阻害するなどして弱らせて、最後は免疫細胞に倒してもらうというものが多くあります。細菌の構造は異なることがありますが、代謝経路は似ているため、代謝阻害効果があるものはいろいろな菌種に効果を発揮しやすくなります。その一方で、「最後は免疫細胞頼み」という点が欠点でもあります。免疫機能自体が弱まっている場合、いくら抗生剤で弱らせることができていても完全に病原体を排除しきれない可能性もあります。
 ペニシリン系の抗生剤は細菌の細胞壁合成の過程を邪魔するので、厚い細胞壁をもつグラム陽性菌を結果的に直接破壊することができます。この特徴から「殺菌性抗生剤」とも呼ばれます。とくに膿汁が見られるような化膿性疾患ではペニシリン系の抗生剤がよく効きます。

 ただ、ここで問題になるのがマイコプラズマ感染性の疾患です。たとえば中耳炎のために耳道から膿が出ていても、その原因がマイコプラズマであればペニシリン系は効果がありません。マイコプラズマには細胞壁がないからです。そのため、マイコプラズマ感染が疑われる場合はペニシリン系の抗生剤の投与という選択肢は真っ先に消去されることになります。そして、代わりに代謝経路阻害効果のある抗生剤やDNA複製を阻害する抗生剤を選択する必要が出てくるのです。


 
 
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