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蓮沼浩のコラム
第795話:頭数の調節

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2024年9月3日

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最近の台風は本当に動きが複雑です。昔はもっとシンプルな動きで、あっという間に日本を突き抜けていくイメージだったのですが・・・。

受精卵移植という技術はとても優れた技術になります。優良な血統の子牛を効率的に生産することができます。そして乳牛に和牛を生ませることもできます。

20年ほど前に、小生に受精卵専門で開業している獣医師の先輩が話してくださいました。

「蓮沼先生ね、授精卵移植の一番の武器は短期間で牛群を改良し、増頭できることなんだよ。」

その当時小生は授精卵に対して、「乳牛に和牛を生ませる技術」と「良い血統の牛を手に入れるための手段」としか認識していませんでした。しかし、実は重要なのは「その技術を用いて戦略的に増頭させること」であることを知りました。

ただ、今はさらに認識がかわってきました。ちょっとオーバーな表現かもしれませんが、以下のようになります。

「受精卵移植の技術は、国家が和牛の頭数を調節するための技術でもある。」

何故このような発想がでてくるのか?

それは、国家が受精卵に対して出す補助金があるからです。受精卵一つに対する補助金の予算を決めれば受胎率等を勘案して簡単に未来の頭数の調整ができます。

実は令和2年の家畜改良増殖法の和牛の頭数の目標は令和12年で243万頭というとてつもない数字を出していました。そのために当時は毎年約4%和牛を増頭しなくてはいけないという状態でした。そこで受精卵移植にクラスター事業で補助金を付けて一気に和牛の増頭をはかりました。

しかし・・・・

和牛肉の内需および外需の伸び悩みや減少により、お肉がダブついてきました。
そしてクラスター事業の受精卵への補助金はストップ。急ブレーキです。

残念ながら小生は全国の受精卵移植の実施頭数のデータをしりません。やっと、生まれてくる受精卵和牛子牛の頭数のデータをしることが出来ただけです。ただ、補助金が打ち切りになっているので、受精卵移植のすそ野が広がっているとはいえ、移植頭数は少し減っているのではないかと予想しています。はたしてどうなんでしょう。

国が和牛の増頭を目指していたところで急ブレーキを踏んでいるので、ありとあらゆるところに影響がでています。一番の影響は相場の低迷。きっと今後は頭数が減ってきたらまた何かしらの形で今度はアクセルをグイッと踏むのでしょう。

ただ、数字合わせはできてもその数字の先には多くの実際に生活している農家さんがいる。畜産に関係する多くの人たちがいる。現実の世界は簡単に方向転換などできません。

世の中は常に変化し、未来を予測することは非常に難しいです。何が正解かはわかりませんが、色々と考えてしまいます。
 
 
今週の動画
いろいろな動物の妊娠期間

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