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藤﨑ひな子のコラム
暑熱4~漏れやすいと何が悪いのか~

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2024年8月9日

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 昨日、宮崎の沿岸部を震源とする大きな地震がありました。皆様、お身体は大丈夫でしょうか。1週間は余震等に気をつけて、備えた生活をしましょう。まずはご自身の安全をお守りください。

 前回のコラムから、「リーキーガット」についてお話しています。
 リーキーな状態とは、腸管を構成する細胞同士の結びつきが弱くなり、腸管内の毒素が体内に入り込んでしまったり栄養を吸収できなくなったりする状態のことであることをお話しました。
 今回のコラムでは、リーキーな状態、つまり漏れやすいと何が悪いか、についてお話します。

 肉牛でリーキーガットとなると何が悪いのか、それは生産性が下がること、です。
詳しくみていきましょう。
① 本来吸収すべき栄養素を吸収できない
 腸管がリーキーな状態になると、本来吸収すべき栄養素や水分を吸収できません。症状としては主に下痢として現れます。暑熱下で下痢が発生するのはこのようなことがウシの体内で起こっているのです。このように栄養素を吸収できないと、栄養不足となり瘦せてしまい、子牛であれば発育不良、肥育牛では枝肉重量の低下、繁殖母牛では繁殖障害などが起こってしまい、これが生産性の低下につながります。
② 腸や全身で炎症が起こる
 腸管がリーキーな状態になると、腸管内の毒素などが体内に入り込んでしまいます。このような物質に対して、ウシは自分を守るために炎症を引き起こします。炎症とは病原体を排除するために起こるのですが、過剰な炎症や慢性的な炎症はウシにとって害をもたらします。炎症のためにエネルギーを使うことで、その他に使うエネルギーが枯渇してしまったり、炎症が腸や全身で起こることで炎症による組織障害が起こったりするのです。このようなエネルギー不足や組織傷害は栄養不足を引き起こし、生産性の低下につながります。

 以上のように、リーキーガットによってウシの生産性の低下が引き起こされてしまうのです。
 もちろん、リーキーガットの状態では下痢や炎症によってウシは苦痛を感じますのでアニマルウェルフェアの観点からも問題となります。

 次回のコラムでは、③どのような時にリーキーガットとなるのか?についてお話します。

 
 
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