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ホスホマイシン治療牛のEU向け輸出規制② |
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2024年7月17日
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前回の続きです。
なぜホスホマイシンだけ規制対象になっているのでしょうか。
端的に言うと、薬剤耐性菌問題の観点からです。
薬剤耐性とは、抗菌薬に対する細菌の抵抗性のことで、抗菌薬が効かない細菌を薬剤耐性菌といいます。
薬剤耐性菌は、抗菌薬の使い過ぎや、逆に不十分な使用量によっても増加します。
薬剤耐性菌が環境中に増加すると、病気に対して抗菌薬が効かなくなり、人も動物も感染症流行のリスクが増えてしまいます。
また薬剤耐性菌は、お肉など畜産物に付着する可能性もあり、それが口から⼈の体内に取り込まれ感染症を引き起こすと、治療が難しくなります。
つまり薬剤耐性菌は、人でもペットでも家畜でもすべてに関係し、皆が気を付けなくてはいけない問題です。
様々ある抗菌薬の中で、ホスホマイシンは比較的新しいものです。グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも効果的で、様々な細菌に幅広く効果を示します。既に薬剤耐性菌としてまん延しているメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも効果があります。
こういった特徴から、ホスホマイシンは薬が効きにくくなった多剤耐性菌の感染症の治療にも使用される貴重な抗菌薬なのです。
しかしホスホマイシンも不適切な使用法で乱用すると、ホスホマイシンの薬剤耐性菌が出現して増える可能性が充分にあります。
このことからEUでは、貴重なホスホマイシンについて動物での使用を規制し、人医療専用とすることで、薬剤耐性菌の出現を防ごうとしているのです。
同様に、人の感染症の治療のみに使用を限定する抗生物質が、ホスホマイシン含め18種類指定されました。そのうち日本の動物用医薬品として承認されているのはホスホマイシンのみということで、日本では現在ホスホマイシ使用に関して注意喚起がされています。
EUは他にも、抗生物質を成長促進剤として動物の飼料添加することを禁止していて、モネンシンがその対象です。
2023年のデータでは、牛肉の輸出先としてEUへの輸出は10%未満と少ないですが、これからの輸出先としては重要になってくるはずです。
EUに輸出するためには、抗菌薬の規制があることを覚えておきましょう。
今週の動画
牛が馬になる??
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