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蓮沼浩のコラム
第788話:遊離ガスの鼓脹症

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2024年7月16日

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小生は世界情勢や経済を調べたり勉強したりするのが大好きなのですが、最近は気分が滅入るのであまり勉強したくなくなってきました。

先日YouTubeの動画に肥育牛の鼓脹症をアップしました。この肥育牛は口からカテーテルを挿入すると、簡単にガスを排出させることができます。口にオーラルクロスという塩ビ管のようなものをくわえさせてからホースを入れるだけです。入れると「プシュー」という音とともに、第一胃のガスが抜けます。ガスが泡沫性ではなく遊離性のため、簡単に抜くことが出来ます。

しかし・・・問題があります。

じつはこの牛さん、何度も再発してしまうのです。牛舎がいっぱいなので、個別管理ができません。そのため、どうしても餌の給餌量を調節しながらうまく管理ができません。どうしたものかと思案しておりました。

そこで今回はしょうがないので橋本先生と一緒に、套管針(とうかんしん)という針を使って第一胃にガスを抜く穴をあけました。そしてそこに点滴用のチューブを留置しておきました。


とてもシュールな絵面です。同居牛に抜かれないように注意してくださいね。

今回は遊離ガスだったため、カテーテルからいい感じにガスが抜けます。そのままこのカテ―テルを皮膚に縫い込み、固定しておきます。外見はちょっとシュールですが、いい感じにガスがたまることなく抜けてくれます。特に何か処置をすることもなく、しばらく放置しておくことに。

すると、1週間後にカテ―テルが勝手に抜けているとの連絡。おそらく同居牛が口で引っ張って抜いたと思われます。

はてさて、どうしたものかと思案していると、牧場の方から「2日前から抜けてたよ」とのこと。オイオイ、早く教えてくださいよ(笑)。

しかしですね、目の前の肥育牛には全くガスが張っていません。元気食欲まったく問題なし。そして、半月ほどたった現在もまったく問題なし。

勝手な想像ですが、慢性的に第一胃が張っていることで迷走神経に余計な圧がかかっていたものが、持続的な第一胃の減圧により改善したのでは?と思っています。

鼓脹症というものは、意外と厄介な症例です。いろいろな治療法もありますが、なかなか完治させることが難しい例も多々あります。今回は套管針(とうかんしん)を用いてカテーテルを留置して第一胃を減圧するという方法を紹介いたしました。簡単なので、何かの時に思い出してみてくださいね~。
 
 
今週の動画
牛が馬になる??

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