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急性鼓脹か起立できなかったのか |
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2024年6月29日
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ときどき「牛がガスで倒れている」というお電話をいただくことがあります。みなさんはガスで倒れたということでものすごく焦っていらっしゃいます。当然ですよね。
そこで落ち着いていただくためにいくつか質問をしていきます。まずは、呼吸はどのくらい苦しそうですか?ということ。というのも、本当に急性鼓脹症で倒れた場合、牛さんは倒れた瞬間に死亡するのが一般的だからです。そこでまだ生きているかを確認するために上記の質問をするわけです。
まさか「生きてますか?」とも聞けませんからね。必死で牛さんのことを心配している農家さんにこんな事いうと、いきなり怒られてしまいますよね。
ですから、呼吸しているかしていないかを確認するために「呼吸はどのくらい苦しそうですか?」と聞くわけです。
苦しそうでも、呼吸していると言うことは「ガスで倒れたのではなく、起き上がれなくてガスが張ってきた」という判断ができるんです。この場合、起こしてやれさえすれば、ガスは自然に抜けていきます。
というと簡単そうですが、倒れて起き上がれない牛さんを起こすのって、じつはとても大変なのです。
僕も駆け出しのころ、お正月に「ガスで倒れている!」という稟告で急患が来ました。慌てて走って行きましたが、牛は横倒しになっていてガスでお腹がパンパンに膨れていました。そこで起こしてからホースを口から突っ込んでガスを抜こうと必死で頑張ったのですが、6人がかりで起こしているのに、まったく起こすことができません。
牛さんも苦しそうにしているので、農家さんもダメなのか?みたいな眼で見てきます。もうこれはとにかくガスを抜くしかない、と覚悟を決めて套管針(太いパイプの中に内針という針が入っていて、第一胃を刺した後に内針を抜くと太いパイプからガスを抜くことのできる器具)を突き刺そうと準備をしていた、まさにその時、ベテランの馬喰のじいちゃんがフラリとやってきて「おまえ達、なにやってんだ?」と言いながら、一人でその牛を起こしたんです。ガスも起きたら自然に抜けてしまいました。
ぼくはもちろんその馬喰さんに弟子入りしました。そのとき起こした方法は「牛さんの鼻を天に向けて引き上げた後、お腹の方へ自分の体重をかけて引っ張る」というものでした。その後、その方法で何頭も起こしています。とても便利なのでビデオもご覧下さい。いつか役に立つかもしれませんよ。
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