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松本大策のコラム
隠れ肺炎を見抜く

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2024年6月22日

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 僕は、肥育農場のコンサルも手がけていますが、その指導でも重視しているのは導入時の腹作りです。ご存じの通り牛さんは、第一胃という大きな発酵タンクを持っており、そこでタンパク質を自分に適した形に作り替えたり、エネルギー源を作り出したりします。
 つまりサシもロースも第一胃で作ると言っても差し支えありません。また、第一胃のコンディションが悪いと、生産効率が悪いだけでなく、異常発酵で生じる毒素の影響で肝炎や筋肉水腫、急性肺水腫など様々な障害を起こすのです。
 ですから第一胃を整えて、将来的に濃厚飼料をドカ食いしてもへっちゃらで、しっかりとサシもロースも作れる胃袋にしてあげる「腹作り」はとても大切にしている訳です。

 さて、腹作りの具体的なやり方は別のところでお話ししていますから、今回は導入期の腹作りの阻害要因、つまり腹作りがうまくいかない原因のナンバーワン(と僕は感じている)隠れ肺炎のお話しです。

 隠れ肺炎というのは文字通り、隠れていて普通にしていると解らない肺炎です。とくに熱が高いわけでもないのですが、食欲がちょっと低下します。このちょっとがミソで、しっかり導入期の粗飼料を食い込んでくれないと腹作りはできませんから、肺炎としては隠れていても、肥育成績の大きな邪魔をしているんです。

 このなかなか尻尾をださない隠れ肺炎を、農家さんが見つける方法があります。
 導入した牛さんの中に入って追いかけ回します。大体2分くらいでいいでしょう。2分以上追いかけてるとこちらの息の方が上がりますからね。そうすると牛さんの群れの中で隠れ肺炎を持った子だけが、息が荒くなり呼吸数も増えて肩で息をする(体幹呼吸)ようになります。みなさんも安静にしているときは肺の半分も使っていませんよね?でも走ると肺の全域を使わないといけないから、肺が痛んでいる牛さんは他の子よりもたくさん必死で呼吸しなければならないんです。これなら体温計がなくても、聴診器がなくても隠れ肺炎を見つけられるでしょ?

 見つけたら、少しオーバーでも肺炎の処置とV4処置をやってあげましょうね。これだけでも農場の出荷成績は変わりますよ。
 
 

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