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蓮沼浩のコラム
第784話:世界の牛肉生産の推移

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2024年6月18日

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2012~2022年の牛肉生産量の推移を調べた報告書(オルテック・ジャパン提供)を読む機会がありました。世界で牛肉はどのくらい生産されているのか、わたくしは知りません。知っておくことはこれからの牛肉業界の流れを知るうえで少しは役に立つかもしれないと思いました。

まずは日本の状況を把握しておく必要があります。

◎令和3年の日本の牛肉生産量
 合計 33万6,115トン
 和牛 16万611トン
 F1 8万3,633トン
 ホル 8万6,442トン

世界の牛肉生産量(2021年)7,253万トン
日本は世界29位の生産量となります。

まずは基本的な情報として上記の数字を頭に入れておきます。

では、2012~2022年に世界ではどのような変化があったのか?

まず特筆する点として、アジアが牛肉生産量を340万トンも増やし、生産量の絶対増加量がすべての大陸の中で最大となったことが挙げられます。世界の牛肉生産量増加分の内46.9%がアジアによるものであり、アジアの急成長は主に中国での急増に起因しています。

何と、この期間に中国は160万トン生産量を増やしています。2022年は世界第3位の生産量となり、718万トン牛肉を生産しています。日本の約21倍です。結構多くなっているのでビックリしました。中国、勢いがあります。

中国での牛肉生産の増加の要因として豚肉の生産量の減少をあげています。ASFが広まったことが大きな原因のひとつとなります。国内人口向けに食肉の供給を確保するために牛肉の生産量を増やし、さらに各種食肉の輸入量も増やしていました。
都市部に暮らす豊かな消費者が一人当たりの牛肉消費量を増やしていることも挙げられます。比較的高価な牛肉を選択することはステータスシンボルでもあるとのことです。

逆に生産量が減っている地域もあります。オーストラリアは27万4,000トン減と世界最大の減少を記録しており、これにドイツ(16万9,000トン減)、フランス(13万3,000トン減)が続きます。

ヨーロッパのいくつかの国で牛肉生産量が継続的に減少しています。この原因としてBSEの影響がまだ残っているためと報告しています。日本に住んでいる小生の感覚だと「え?まだ影響しているの??」と思うところがありますが・・・。

BSEが英国で初めて確認されたのは1980年代中ごろのことで、その後ヨーロッパ中に広がりを見せたことで牛肉の消費量が激減し、その後何年もの間回復することはなかったようです。意外です。また、鶏肉と比べて生産コストが高いことも一因で、これによって小売価格も高くなるため、結果消費者の手が出にくくなると報告されています。
日本でも現在実質賃金が24カ月連続昨対比で減少している状況であり、消費者の手が出にくくなっている点は同じです。さらにヨーロッパはロシア・ウクライナ戦争の影響も大きく響いているようにも感じます。ヨーロッパでは牛肉は意外と高級品なようです。鹿児島県からもEUに和牛を輸出していますが、相手国ではかなり贅沢なものなのかもしれません。ただ、円安なので少しは割安だと思うのですが・・・。

牛肉の世界の動きをざっくりと調べてみましたが、中国の勢いが凄いと改めて思いました。今後もこの傾向は続いていきそうです。

今世界は多くの問題が勃発しており、予断を許さない状況です。そのような中でも何とか日本はうまくやっていかないといけません。先月の5月29日に食料・農業・農村基本法の改正法が成立しました。まあ、これを読むとゲンナリします(あまり読まない方がよい)が、世界の流れが芳しくない状況なのでいたしかたありません。
 
 
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