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松本大策のコラム
「粗飼料のお話−2 ”餌やりの順番で肉質が変わる?”」

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2008年4月7日

 さて前回は、粗飼料の消化速度の違いで腹のふくらみ方が変わるというお話をしましたが、今回はそれと関連して合理的な餌やりの順序について考えてみたいと思います。
 今回のテーマは「餌やりの順番で肉質が変わる?」というものですが、正確に言うと「飼料の食い込み量が変わる」というお話です。飼料の食い込み、特に前期の粗飼料の食い込みが良くなれば、中期の配合の食い込みも良くなり、後期にも順調に「枯れる」という理想的なパターンを描くことが出来ます。
 僕に肥育を教えてくれた鹿児島の馬喰さんたちも「肥育のコツは前期の粗飼料の詰め込み」だと話してくれましたし、実際肉質の良い農場ではそのように飼育されています。
 前置きが長くなりましたが、それでは実際どのような順番で餌やりをするのがよいのでしょうか?教科書的には「イナワラを最初に与えて第一胃の中にマットを形成し、配合飼料を与えた時の第一胃内の酸性化が急速に進むのを防ぐ」ということになっています。これは正しい理屈です。しかし、イナワラは前回書かせていただいたように消化速度が遅く、第一胃をその分占有してしまいます。イナワラから与えると、第一胃の容積を100とした時に、イナワラ+前期粗飼料+前期配合=100の量しか食い込むことが出来ません。そこで、ヘイキューブやルーサンヘイなどの「消化が早く、タンパクの高い粗飼料(ビール粕などもそうです)」を最初に与えてやると、次にイナワラ、前期配合の順で餌を与える時には、最初に与えたヘイキューブなどのかなりの部分が消化されて第2胃以降へ流されていますから、第一胃の容積にかなりの余裕が出来ていて、イナワラ+前期粗飼料だけで100近くの量が食い込めるという寸法です。つまりイナワラから与えた場合に比べて、ヘイキューブなどの分だけたくさん食い込ませることが出来るのです。粗飼料やビール粕は第一胃を酸性化しないので、先に与えてもかまわないんですね。
 いくら消化が早いからって、配合から与えるとルーメンアシドーシスをやってしまいます。
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