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松本大策のコラム
生産性を阻害する要因(病気)を抑える(8-5)

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2012年5月28日

- 第8章 下痢について考える その5- コクシジウムのお話し(3)

 前回、コクシジウムには、サルファ剤が有効なのに、ジメトキサンやダイメトンS散ではなく、エクテシン液をお勧めします、というお話しで終わりましたね。
 「うちはずっとダイメトンを使ってるけど問題ないですよ。」というメールもいただきました。そこで今回は、どうしてサルファ剤の単独製剤をお勧めしていないのか?について、お話しをしましょう。

 コクシジウム相手でしたら、確かにサルファ剤単独で十分やっつけられるんです。ただ、僕たちがお世話している牛さんたちは、コクシジウムとだけ闘っているわけではありません。
 他のいろいろな病原体とも闘っているのです。その「敵」の中でも、とくに注意しなければならないのが、クロストリジウム属のバイ菌です。というのも、クロストリジウムはよくコクシジウムと混合感染しており、重度の血便の原因や敗血症の原因になります。そして、気をつけなければならないのは、「クロストリジウムは、サルファ剤を使うと、強い毒素を出したり芽胞を形成する能力が向上したりしてうしを弱らせる」という点です。
 「コクシジウムの治療のつもりでサルファ剤を単独で使ってたら、牛が死んでしまった」というお話しは、よく耳にすることです。
 クロストリジウムは、鳥の糞などで持ち込まれます。ですから、鳥の来る牛舎には血便が多いのですね。

 ですから、たとえコクシジウムをターゲットに予防するにしても、そこいら中にいるクロストリジウムの事も考えておかなければ、牛さんの危険が増すのです。治療の場合はもちろんサルファ剤とアンピシリンなど、クロストリジウムをやっつけられる薬を併用しますし、予防の際も、サルファ剤にクロストリジウムにも効果のあるオルメトプリムという合成抗菌剤の入ったエクテシン駅液をお勧めしている訳なのです。
 これまでだいじょうぶだったからと言って、今回もクロストリジウムが紛れ込んでいないとは言い切れませんからね。

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