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松本大策のコラム
今年も急性肺水腫の季節になりました

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2024年6月1日

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2025年卒獣医師採用について
(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)、栃木支所(栃木県那須塩原市)ともに獣医師を募集しております。
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 去年は1週間ほど前には栃木も30℃越えてましたが、今年は暑いところから急に寒くなったりと、子牛も対処しにくい気候ですが、そろそろ真夏日も増えてきて、あのイヤな急性(甚急性!)肺水腫が出る季節になりました。

 急性肺水腫は、つい先ほどまで普通にしていたのに、気がついたら口から泡をふいて呼吸困難になっている、というくらい急に発症します。僕の経験では治療に反応したことはなく、なんとか屠畜場に運び込めたものだけはお肉にできた、というくらい対応ができない病気です。原因は、主に第一胃の異常発酵て発生する3-メチルインドールという物質が肺血管の水分透過性を急に亢進することだと言われています。

 昔は、鹿児島の食肉検査場では、午後8時までは緊急屠畜を受け入れてくれていたので、僕も何十頭もの尿石症や急性肺水腫を助けていただけました。しかし、最近では普通の日でも、午後からの急患は翌日午前中の屠畜、金曜日にもなると、次週の月曜日屠畜になってしまいます。現場の獣医師も、この国の畜産農家さんを護るために必死でやっていますが、助けられるものと、急いで出荷しなければどうにもならないものがいます。

 この資源のない国で、海外からの輸入飼料を何トンも与えて育てられた畜産物を無駄に死なせてしまうことがどれだけ罪深いか、ちょっと考えるまでもなく誰でもわかるでしょう。畜産保護、農業保護を口にしながら、こういう絶対に必要な対応をしないのは、この国の誤魔化しを端的に表しています。みなさん、こういった国の政策のまずいところに声をあげていきましょう。

 それまでは、とにかくこのような牛が出る可能性を減らすために、この時期からビタミンA、Eを強化してあげること、パントテン酸などの添加をしてあげること、良質の生菌剤を与え、飼料内容や給餌時間を一定にすること、等をしっかり実行しましょう。

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