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戸田克樹のコラム
第438話「涎まみれがいいじゃない③」

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2024年5月2日

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2025年卒獣医師採用について
(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)、栃木支所(栃木県那須塩原市)ともに獣医師を募集しております。
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 私たちの唾液にはアミラーゼが含まれています。ご飯を噛み続けると甘みが出てくるのは、このアミラーゼによるでんぷんの分解によって糖が生じるからですよね。犬や猫のような肉食性の動物の唾液には含まれておらず、アミラーゼは基本的には私たち人間を含む雑食性の動物がもつ口腔内酵素です。
 では、牛はどうなのでしょう。牛は雑食ではなく草食ですよね。ということは、牛の唾液にはアミラーゼは含まれていません。もちろん子牛もしかり。その一方で、「哺乳期子牛特有の酵素」が唾液には含まれています。それが今回紹介する舌リパーゼとプレガストリックエステラーゼ(PGE)という酵素です。どちらも脂肪の消化を助けてくれる酵素です。大人になれば膵臓から分泌されるリパーゼがしっかりと分泌されるため、それにより消化管内の脂肪は分解されていくのですが、子牛の時期は生後1か月くらいになるまでは膵リパーゼの分泌能力が未熟です。しかし、唾液中のリパーゼやPGEがミルクと混じって胃に流れ込み、その後の脂肪分解を助けてくれるため、ミルク中の脂肪を吸収できるというわけです。
 ミルクをすぐに飲み干してしまうと唾液の分泌量が少なく、消化酵素の分泌量も低くなります。そうすると、消化不良性の下痢を起こしやすくなり、同時に栄養分の吸収がうまくいかないため、同じミルクを飲んでいても増体率に差が出る可能性があります。せっかくミルクを飲んでもらうなら、少しでも多く吸収してほしいものです。ゆっくりとミルクを飲んでもらい唾液をたっぷりと出してもらうことは、乳脂肪分の分解吸収にとっては非常にいいことなのです。
 
 
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