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戸田克樹のコラム
第439話「涎まみれがいいじゃない④」

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2024年5月9日

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 ちびちび哺乳のメリットとして、①誤嚥リスク低減②唾液分泌亢進③消化管への負担軽減といったものを挙げてきました。しかし、おすすめのちびちび哺乳にもデメリットが存在します。
 それはひとえに「飲乳に時間がかかる」という点です。できるだけゆっくり飲んでほしいところですが、その間にミルクが冷めていくとお腹が冷えてしまいます。そのため、寒冷期にはあまり向いていない方法です。また、手やりで飲ませる場合は飲み終わるまで人が離れることができないため「他の作業ができない」という問題も生じてしまいます。個体によっては吸引行動そのもので疲れてしまい、途中で飲むのを諦めてしまう子牛がでてくる可能性もあります。
 対策としては、作ったミルクの温度を経時的に測定することで「〇分までは40℃を切らない」というリミットを調べ、その時間の範囲内で飲み切るように管理する。また、ボトルホルダーなどを利用して、この際ミルクの手やり作業そのものから卒業してみるのもいいのではないでしょうか。疲れて飲めなくなってしまう子牛には、しばらくは普通の乳首で飲ませていき、様子をみながらリトライしてみるしかありません。成長とともに飲む力が育っていきますので、最初はうまくいかなくても後々しっかりと飲みきってくれるようになります。こうした問題とは別に「どれくらいの速度がいいのか」という問題もありますよね。これについては、ちびちび哺乳用の乳首が市販されていますので、まずはそちらを導入してみるのがよいです。目安としてはミルクを飲み終わったあとにいつまでも乳首を吸っている、壁や他の子牛の体を吸う、といった行動が見られなければ子牛自体が満足しているサイン(吸引行動が十分に行えた証)です。
 ちびちび哺乳によって、下痢の発生が減り、増体率もよくなったという報告もあります。「時間がかかる」というデメリット(ちびちび哺乳というものが「ゆっくりミルクを飲んでもらう」ということなので当然なのですが)の対策を考える必要はありますが、やってみる価値は十分にありそうです。
 
 
今週の動画
先天性屈腱短縮で前膝が伸びなかった子牛

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