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戸田克樹のコラム
第437話「涎まみれがいいじゃない②」

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2024年4月25日

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2025年卒獣医師採用について
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 ミルクを飲む速度が速いことで生じる問題は誤嚥だけにとどまりません。第二胃溝反射が不十分でルーメンにミルクが流入するリスクが高まったり、胃腸に多大な負担をかけたりすることも問題となります。ミルクがもしルーメンに入ると、ルーメン内細菌によって速やかに分解され種々の脂肪酸が生じ、ルーメンアシドーシスのような状態になってしまいます。また、ミルクの最初の貯蔵先は第四胃です。空っぽで小さくなっていた第四胃に多量のミルクが一気にドバっと入ってくると、そのミルクを許容するために四胃が拡張します。そして、すぐさま消化を始めないといけないので、大慌てで胃腺からキモシンなどの消化酵素を分泌します。これ、私たちが第四胃の気持ちになって考えると結構たいへんな状況であることがわかります。ゆったりと休んでいたところに、多量のミルクが一気に流れこんできます。まずは容積を広げるために四胃を広げなければいけません。そのあとは急いで消化液をドバドバと分泌させます。多忙です・・・。 私たちもドカ食いすれば翌日胃もたれしたり、下痢したりしますよね。下痢まで起こってしまうと、腸内細菌のバランスも崩れてしまいますし、増体率の低下にもつながります。また、腸管の急激な拡張や異常な蠕動運動によって四胃捻転や腸捻転が起こる危険性もあります。やはり、ドカ食いならぬドカ飲みは体にあまりよくはなさそうです。

 こうした消化管への負担を減らし、そして消化効率を少しでも高めることができるのが「チビチビ哺乳」なのです。子牛が吸引をがんばっても少しずつしかミルクが出てこないと、四胃にも少しずつしかミルクが入っていきません。四胃はジワジワと拡張し、胃腺からの消化液の分泌もジワジワと行われます。さらに、飲みたくて仕方ない子牛は激しく乳首を吸い続けるので唾液腺からは多量の唾液が分泌されます。そして、このたくさん唾液が分泌されるという点こそがチビチビ哺乳の重要ポイントなのです。


涎まみれでいこう!
 
 
今週の動画
【下痢】哺乳期子牛の下痢の原因(食事性下痢)

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