(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤﨑ひな子のコラム
中耳炎

コラム一覧に戻る

2024年4月19日

****************************************
2025年卒獣医師採用について
(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)、栃木支所(栃木県那須塩原市)ともに獣医師を募集しております。
詳細はこちらをご覧ください。
随時実習も受け入れております(5年生以上対象)。
****************************************
 
 ツバメもアパートに巣を作り、最近の出勤はにぎやかに感じます。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 BVDのお話の途中ですが、本日はウシの「耳」についてお話します。
 今年の4/11にシェパードのYoutubeで中耳洗浄についての動画が上がっています(動画作成者は別の先生です)。
 中耳炎は主にマイコプラズマの感染によって起こるといわれており、「耳垂れ」という特徴的な外貌を呈します。時には、耳から膿が出ていたり、顔面麻痺や斜頸が確認されることもあります。
 中耳炎とは、どういう疾患なのでしょうか?

 「耳」には外耳、中耳、内耳があります。鼓膜までを外耳、耳小骨という音を増幅させる骨がある空間を中耳、そして音を感じ取る蝸牛と平衡感覚をつかさどる前庭・三半規管からなる部分を内耳と言います。
 私たち人間が耳かきや綿棒を入れる部分は「外耳」で、中耳・内耳は鼓膜よりも内側に位置しているので、見えない部分です。中耳炎とは、この中耳で炎症が起こっている状態なのです。

 中耳の腔所を鼓室といい、ウシには「鼓室胞」と呼ばれる特徴的な構造があります。鼓室胞は、中耳にあるぽこっとした部分です。この部分はただの空間ではなく、薄い骨でできたひだが内腔に向かって多数伸びています。中耳炎を発症し、耳介下垂を呈する子牛では鼓室・鼓室胞に膿がびっしりと詰まっていることがあります。特に鼓室胞に膿がたまると、健康なウシで認められる骨のひだが溶けてしまうこともあります。多数の神経が鼓室胞に沿って走行していますので、鼓室胞が溶けたりすると、障害を及ぼす可能性があります。

 また、中耳からさらに奥へ進むと内耳があり、この領域には神経が多数存在します。そのため、中耳炎に起因する炎症が周囲へ波及したり、物理的な圧迫によって神経が傷害されると、耳介下垂や顔面麻痺、斜頸といった神経症状が出るのです。

 中耳炎の主な治療は抗菌薬の全身投与ですが、あまりにも膿による圧迫がひどく、排膿しないような症例に対しては中耳洗浄を行うこともあります。ぜひYoutubeを見てみてくださいね。
 
 
今週の動画
除角

|