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戸田克樹のコラム
第435話「頸静脈拍動と頸静脈怒張の違い」

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2024年4月11日

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 血管注射や点滴をするときにお世話になる頸静脈。もしその頸静脈が心臓の拍動に合わせて波打っていたり、駆血をしていないのに血管の輪郭が見えたりしたら、それはちょっと心配です。前者は「頸静脈拍動」、後者は「頸静脈怒張」という状態で、どちらもしっかりと健康であれば見られない状態です。


(駆血により浮かせた頸静脈)

 心臓は体中に血液を送るポンプの役割をしてくれています。健康な心臓は全身から帰ってきた血液をギュッ!!!!!と押し出してまた全身に送ってくれます。ちなみに全身から戻ってくる血液は酸素が少ない血液を静脈血、肺を経由して再び心臓に戻ったあと全身に向かう酸素の多い血液を動脈血と言います。ここで大切なことは「心臓に入る血液量と出ていく血液量は常に同じである」、ということです。健康な心臓は入ってくる分だけを押し出せるのですが、その機能が落ちると「血液を出す力」が弱まります。そうすると、心臓に入ろうとする血液が渋滞を起こします。その結果、頸静脈に留まる血液量が増えてしまい、頸静脈拍動や頸静脈怒張がみられるようになるのです。
 こうした現象がみられるときは心臓の力が弱まっていることはわかるのですが・・・。ではどう治療すればいいのか!という点が難しいのです。細菌感染による心筋炎であれば抗生剤による治療を試みますが、治るかどうかはやってみなければわかりません。心臓の機能を直接改善させる薬剤もありません。また、心臓でどんな問題が起こっているのかまで確定診断をつけることも難しいため、心機能が弱っている原因を特定させることさえ難しいのです。心機能が弱っている可能性があれば、その牛の体調に目を光らせ、採食量や活力が落ちたら速やかに獣医師に診察を依頼し、必要であれば出荷の判断も検討する、というのが現実的な対応となります。
 
 
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