(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
藤﨑ひな子のコラム
移行抗体②

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2024年3月29日

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 暖かくなり、桜も満開ですね。そろそろ衣替えもしないとな~と思います。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 前回のコラムでは、子牛は初乳に含まれる「移行抗体」を母牛から受け取り、未熟な免疫系を補っていることをお話しました。今回のコラムでは、どのくらいまでに初乳を飲ませればいいのか、初乳に含まれる移行抗体量や子牛が吸収した移行抗体量を測定する簡易的な方法についてお話します。

 まず、どのくらいまでに初乳を飲ませればいいのかについてです。
 シェパードでは、出生後4時間以内(遅くても6時間以内)に初乳を飲ませることを推奨しています。この「6時間」という目安は、子牛が吸収できる移行抗体量が半分になる時間です。血中に移行抗体が存在することで、全身の感染症に対して抗体が働くことができるので、この6時間でいかに初乳を飲ませられるかが重要なのです。ただし、6時間以降に摂取した移行抗体も少しは血中に移行しますし、吸収されなくても腸管に留まって働きますので、無駄ではありません。

 和牛の場合、生まれて少なくとも数日は親付けの農家さんがほとんどでしょう。その場合、子牛がきちんと初乳を飲めているか、母牛の初乳の品質・量は良いか、を把握することが難しいのではないでしょうか。子牛が虚弱体質である場合、「初乳はしっかりと飲めたのか」を確認するために子牛の血液検査を行います。これは、「γGTP」という初乳が飲めたかという指標になる物質を測定するためです。このγGTPが高値であれば、子牛は初乳をしっかり飲んで血中に移行抗体が存在する状態を表します。また、初乳中の移行抗体量を推定する方法もあります。移行抗体、つまり免疫グロブリンはタンパク質ですので、初乳中のタンパク質濃度を測定することで間接的に移行抗体の量を算出することができます。また、初乳の糖度(Brix値)が移行抗体量と相関することも知られており、糖度計を用いて初乳中のBrix値を算出することで移行抗体量を推定することもできます。
 
 
今週の動画
【下痢】哺乳期子牛の下痢の原因(感染性下痢)

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