2024年3月22日 **************************************** 先月はお産ラッシュが続いていました。難産介助などで農家さんに呼ばれると、大変なことも多いですが、母子ともに健康に分娩を終えられるとホッとします。しかし、「分娩」はスタート地点です。子牛はお母さんのお腹の中、つまり子宮という無菌的な環境からいきなり微生物にあふれた環境へ生まれてくるのですから、新生子牛は感染症のリスクに晒されます。新生子牛は出生時に自然免疫と獲得免疫のいずれも備えてはいますが、成獣の免疫能と比較すると未熟です。そのため、生まれた子牛は母牛から免疫学的な加護を受けるのです。もしこの加護がないと、成牛には全く病原性を示さないような微生物によっても子牛では死んでしまう可能性があります。 母牛から子牛への免疫学的な加護は初乳を介して供給されます。初乳とは分娩後数日間に母牛から分泌される乳汁のことで、分娩後最初に泌乳したものを指すことが多いです。初乳には「抗体」が豊富に含まれており、この抗体を「移行抗体」といいます。母牛から子牛へ「移行」する抗体、という意味です。初乳を飲んで子牛に吸収された移行抗体は、子牛の血中を循環し微生物が侵入した場合に子牛自身の免疫の代わりに働きます。 生まれた子牛が感染症にかかりやすい場合、獣医師はまず「子牛は初乳を飲んでいますか?」と聞くと思います。ここで獣医師が指す初乳とは分娩後最初に泌乳した乳汁のことで、子牛で移行抗体が働いているかを確認しているのです。初乳を飲ませているのにも関わらず子牛の免疫能が弱い場合、以下のようなことが考えられます。 皆さんは子牛を健康に育てるためにどのような点に注意していますか? 次回のコラムでは、どの程度子牛に初乳を飲ませればいいのか、初乳に含まれる移行抗体量や子牛が吸収した移行抗体量を測定する簡易的な方法についてお話ししようと思います。 |