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池田哲平のコラム
牛の解剖100:膀胱(2)

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2012年5月18日

 膀胱というのは風船のような組織で、尿が溜まっていない時は本当にぺったんこになってしまいます。逆に、尿が溜まっていくとどんどん大きくなっていきます(どれくらいの大きさになるかはまた別の機会に紹介します)。

 膀胱炎や尿石症の疑いがある牛さんの診察では、直腸検査で膀胱の触診をしたりします。哺乳類の多くは膀胱の最大容量に対して3~4割ほど尿が溜まった時点でおしっこをするので、1~2割しか溜まっていない時には膀胱はほとんどぺったんこになっていて、触っても分からない時もあります。こういった時は「触れない=おしっこが溜まっていない=問題なし」と判断しています。偶然にも排尿前の4割ほど溜まっている時に触診すると、生理的範囲内なのか病的なのか迷う事もあります・・・(悩みながら直検をやめた瞬間、勢いよく排尿するといった事もありました)

 しかし、普段診療していると、オス(去勢)牛ではこの生理的範囲内であれば直腸検査では膀胱にほとんど触れない(膀胱が分からない)ことが普通です。逆に膀胱がある程度はっきりと分かった場合は、尿石症などによる排尿障害があるのではないかを疑います。メス牛では比較的しっかり分かる事も多いので、個人的には(教科書や成書にはっきりと書かれたものを見た事はありませんが)体の中での膀胱の位置や形がオスとメスでは微妙に違うのではないかと思っています。

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