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戸田克樹のコラム
第431話「後弓反張とは」

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2024年3月14日

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 後弓反張という単語を聞いたことがありますか?

 この写真のように頭をぐっとあげたまま動かない姿勢のことを指す単語です。この姿勢を示すときは同時に目を見開いていたり、焦点が合わなかったり、痙攣を示したり、四肢をピーンと伸ばしたり、水泳をしているかのように足をバタバタと動かしたりする(遊泳運動と言います)こともあります。
 こうした状態を見ると、神経症状を示している=脳(とくに運動機能を調整する小脳)や脊髄といった中枢神経に問題が生じていると推測します。脳脊髄炎なのか、乗駕やスタンチョンでの事故などによる頸椎損傷なのか、クロストリジウム感染による破傷風やボツリヌス症なのか、大脳皮質壊死症なのか、ヒストフィルス・ソムニ感染症なのか、小脳低形成などの先天性の奇形なのか、脳腫瘍なのか、さまざまな原因が考えられます。
 しかし、共通して言えることは「この姿勢を示したら結構な割合で死亡してしまう」ということです。重症中の重症といえる状態なのです。抗生剤や消炎剤の投与、ビタミンB剤の投与、抗血清の投与など、診断に基づいた治療法は確かに存在するのですが、それを行ったところで復活してくれたケースはほとんどありません。ある程度月齢のいった肥育牛であれば緊急出荷を検討することが多いです。母牛であれば治療を積極的に行いますが・・・治癒までもっていけるかは難しいところです。
 臨床の現場では見かけたくない状況ですが、休薬期間のある薬剤を使用してもよいのかどうかも含めてよく検討しなくてはいけない重症であることだけは間違いありません。
 
 
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