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藤﨑ひな子のコラム
カットオフ値

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2024年3月8日

 卒業シーズンを迎え、お昼時でも学生さんを見ることが増えてきました。もう春ですね。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 前回のコラムでは、「感度」と「特異度」によって検査の精度が担保されているというお話をしました。今回のコラムでは、実際に検査系を立ち上げるときに、どこから「陽性」とし、どこから「陰性」とするか、の指標である「カットオフ値」についてお話します。

 理想的な検査は感度・特異度ともに100%ですが、感度・特異度はシーソーの関係であるためそのような理想的な検査は存在しません。また、疾患によって偽陰性と偽陽性のリスクは違います。例えば、特異度が高い検査だと感度は低下し偽陰性が増えます。このような検査系で摘発淘汰が重要な疾患の検査をすると、陽性個体を見逃してしまうリスクが高くなってしまうため、不適切な検査法であると考えられます。

 これらの総合的なリスクを最小にできる境界をカットオフに設定する必要があります。カットオフ値とは、定量データを区切るために用いる基準値のことです。例えば、検査結果が1以上のときは陽性、1未満のときは陰性、とする検査系では、1がカットオフ値です。
 カットオフ値を設定するためには、ROC曲線を描く必要があるのです。下の図をご覧ください。

 カットオフ値を連続的に変化させたときに描かれる曲線をROC曲線といいます。縦軸に感度、横軸に(1―特異度)を取り、感度・特異度を視覚的に表したものです。図の中の赤丸の位置、つまり感度が1、1-特異度が0(つまり特異度が1)となるカットオフ値を持つ検査が理想的な検査系ですので、この赤丸に最も近い感度・特異度となるようカットオフ値を設定するのです。

 今回のコラムでは、定量的なデータを扱う上で重要な「カットオフ値」の設定についてお話しました。次回のコラムでは、データの定量・定性という特性についてお話します。
 
 
 
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