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松本大策のコラム
今日は運送屋さん

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2024年1月20日

 今日は子牛を乗せてドライブでした。友達のいないおじさんが暇だったの?とか言われそうですけど、違います!大きな農場から新しい農家さんへもらわれていく子牛を運んでいたのです。

 じつは、その子牛は生まれたときから起立不能でした。抱きかかえて起立させようとしても、四肢ともナックリングがありましたし、前膝(前手根関節)も軽度の変形と伸展不全がありました。さらに体重を支える筋力もなく、筋肉を動かす神経も麻痺を認めたのです。

 治療方針としては、シェパードのV4処置と筋肉や靱帯の増強にためにプリモボラン、骨の変形のためにカルシトニンを打ち、1週間アミノ酸製剤と神経賦活のためのビタミンB1,6,12製剤の補液およびデキサメサゾンを続けました。
 大規模農場では時期によっては、子牛の出生頭数が偏って多くなる時期があります。そうなると、予後が不明な子牛を飼育しておくスペースも余裕もなくなります。それでこの子は1週間の徹底治療で予後判定をすることになっていたのです。
 この子は1週間目の治療後によろよろと立つことができるようにはなったのですが、補助がないと立てないこと、後肢の力が十分に入らないことから、この農場での飼育はできないと判断されました。通常、このように淘汰された子牛は安楽殺されることになります。

 しかし、この農場の社長さんもスタッフの方々も子牛の命を取るのはとてもつらいことですし、またシェパードとしてもできればその子牛をなんとか助けたいと思っていました。
 そこで社長さんに「どこかもらい受けてくれる農場がいたら譲っていただけませんか?」と申し入れをしたところ、とても喜んでただで譲ってくれるというお返事をいただきました。すぐにシェパードのつながりのある農家さん達に連絡を取ったところ、二つ返事で「うちで飼います」というお返事をいただきました。やはりうちのお客さん達はうちと似たような考えの方が多いようです。

 そういうわけで、今日のお昼に僕が連れて行くことになったのです。

 30分ほどのドライブの間、子牛ちゃんはとてもおとなしくいい子にしていてくれました。新しいお家に到着して下ろしてあげると、一生懸命歩こうとしましたが、やはりなかなか自力で歩いて行くのは大変そうでした。うれしかったのは、その間ずっとその農家さんで飼育されているお母さん牛たちが、その子を心配してモーモーと泣いてくれたことでした。
 急なお話だったのに、しっかりとハッチを作って下さっていたので、その中に座らせてゆっくりさせました。
 夜に自宅に帰っていると、その農家さんからLINEでミルクを飲みました!と写真まで送ってきていただきました。

 しあわせにちゃんと育つんだよ。

 言っときますけど、どこからも1円もいただいていませんからね。すぐそういうこと言われるんで(T-T)

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