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松本大策のコラム
なぜ水が十分にない状況ではタンパク質を控えるべきなのか?

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2024年1月13日

 先日アップした地震の被害に対応するためのビデオ https://www.youtube.com/watch?v=QrSltGrT4Mc でもお話ししたことですが、断水や凍結等で水を十分与えられない場合、タンパク質の給与を控えた方がよいのです。牛さんでは、第一胃の状態を良好に保つためにもイナワラのみの給与を行った方が安全です。

 ところで、なぜ水が十分に与えられない状況ではタンパク質給与を控えた方がよいのでしょうか?
 それはタンパク質の構成成分に秘密があります。

 表にしましたが、食べ物は有機物という物質です。有機物は、炭水化物、脂質、タンパク質に分けられます。食べたもののカスはウンコに排泄されますが、吸収された有機物の老廃物の排泄は有機物を構成する成分(元素)によって異なります。このうち、炭素と酸素は二酸化炭素として排泄できますし、水素と酸素は水蒸気として排泄できます。問題はタンパク質だけに含まれる窒素(N)です。
 窒素を含む有機物の老廃物はアンモニアもしくは尿素として排泄するしかありません。これを排泄するのが泌尿器で、いわゆる尿として排泄します。窒素を含むタンパク質の老廃物(アンモニア)は、生き物にとってとても危険な毒物なのです。ですから、身体の中から速やかに排泄するために泌尿器というものが発達しました。
 しかしながら泌尿器でアンモニアやその代謝物である尿素を排泄するにはたくさんの水が必要なんです。そう、老廃物を含んだ排泄物であるオシッコとして排泄するための水がたくさん必要になるのです。

 そういうわけで、炭水化物や脂質を摂取したところでその代謝や排泄にはたいした水分は必要としないのですが、タンパク質を摂取するとその代謝物として発生するアンモニアが強い毒物なので、急いで排泄しなければ命に関わってきます。そしてそのためには多くの水分が必要となるのです。
 ですから水を十分に与えられない状況の時は、タンパク質の給与は徹底して減らさないといけないのです。
 
 

 今週のビデオは牛さんの後脚の持ち上げ方です

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