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藤﨑ひな子のコラム
遺伝性疾患

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2024年1月19日

 昨日は日中の気温が18℃となるほど、2月とは思えない暖かい日となりましたが、来週の火曜日あたりからまた冷え込むそうです。寒暖差についていくことが牛も私もきついなと感じる日々です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 今回のコラムでは、黒毛和種の遺伝性疾患についてお話します。

 病気は、遺伝的な原因(遺伝性素因)と外的な原因(環境因子)の二つの要因の組み合わせで発症します。遺伝性疾患とは、遺伝性素因と環境因子という二つの要因のうち遺伝性素因が疾患の発症と直結する疾患です。今回のコラムでは、日本で問題となった黒毛和種牛の遺伝性疾患で、原因となる遺伝子異常が明らかになっているものをご紹介します。

バンド3欠損症(遺伝性球場赤血球症)
 溶血性貧血が特徴です。生後約2週間を生き延びると症状は改善しますが、生後2~3年間で成長不良が顕著です。

チェディアック・東症候群
 肩部やけん部、臀部、骨盤腔内などの血種、鼻環装着や去勢後の過剰出血など、「出血」が特徴的です。

キサンチン尿症Ⅱ型(モリブデン補酵素欠損症)
 キサンチンが分解できないため、多量の黄白色~黄褐色のキサンチン結石が腎臓、尿管、膀胱、尿道に蓄積し排尿障害を呈します。その結果腎不全や膀胱破裂となり、尿毒症で死亡します。また、過長蹄となります。

前肢帯筋異常症(三枚肩)
 前肢帯筋が低形成のため出生時より振戦、起立困難を示します。起立時に肩甲部が上方に隆起するため、三枚肩と呼ばれます。

尿細管異形成(クローディン16欠損症)
 尿細管上皮細胞の配列異常と脱落が起こるため、腎機能が低下します。生後2~3カ月齢から発育不良を呈し、過長蹄が特徴的です。

 今回のコラムでは黒毛和種の代表的な遺伝性疾患をご紹介しました。遺伝性疾患には特徴的な外貌や症状が認められることが多いです。しかし、軽症例では症状を示さなかったり、外貌ではわからなかったりする場合もあります。病気の治療をしていてなかなか治らないという事例や、出生時に何か変だなと思うことがありましたら、遺伝性疾患の可能性も視野に入れてみましょう。
 
 
 
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