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藤﨑ひな子のコラム
第一胃鼓脹症の概論

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2024年1月12日

 早くも1月中旬を迎えます。私はこの前の休日にやっと初詣に行ってきました。今年も頑張ってまいります。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

 さて今回のコラムでは、今年の初診療が「ガス」でしたので、「第一胃鼓脹症」の概論についてご紹介します。

 第一胃鼓脹症とは、第一胃内の異常発酵によって大量に産生されたガス、または曖気(げっぷ)障害によって充満したガスにより第一胃の内圧が急速に上昇し、消化や呼吸機能が傷害される病気のことです。症状として、はじめは左側上膁部が傍流して突出し、進行するにつれ腹囲全体が膨隆します。お腹を痛がったり食欲がなくなったり、呼吸困難を示し窒息死することもあります。
 第一胃に溜まるガスの性状によって、①遊離ガス性と②泡沫性に分類されます。

① 遊離ガス性鼓脹症
 原因は食道梗塞、低カルシウム血症による第一胃運動の低下、食道運動性の低下、胸腺型白血病など腫瘍による食道の圧迫、迷走神経性消化不良、横隔膜筋ジストロフィー、長時間の横臥姿勢、胃カテーテル操作時の食道や噴門部の損傷、胃内噴門部の異物があげられます。   つまり、噴門部(胃の入り口)よりも手前が詰まってしまったり、第一胃や食道の運動性が低下したりすることでガスがげっぷとして排出されないために発症します。
 治療法は、胃カテーテルを用いた第一胃内ガスの排除や第一胃運動の促進(塩酸ベタネコール製剤やネオスチグミン製剤、塩酸メトクロプラミドなど。低カルシウム血症を伴う際はカルシウム剤)があります。また猿轡をかませる方法もあります。

② 泡沫性鼓脹症
 原因は、易発酵性炭水化物およびタンパク含有量が多く、粗線維が少ない飼料の多量摂取によって第一胃内で異常発酵を起こし、植物壁細胞中の高表面活性物質(サポニンやペクチンなど)と粘液産生菌やムチン溶解細菌により第一胃内容液の粘稠性が高まることがあげられます。
 軽症例に対しては消泡剤や吸着剤を投与することで症状が改善することもあります。しかし、泡沫性鼓脹症では消泡剤を併用しても胃カテーテルによるガス排除が困難な場合が多いため、套菅針を用いて直接第一内からガス排除をこことみることもあります。

 予防として、飼料中に含まれる易発酵性の炭水化物やタンパク質量に気を付け、粗線維量を確保することが基本です。開花前期のマメ科牧草や、カルシウム・マグネシウム・窒素を多く含んだ牧草、発酵した牧草やサイレージ・粕類・濃厚飼料などの多給は第一胃内で異常発酵しやすいのでご注意ください。
 
 
 
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