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加地永理奈のコラム
第36回とちぎの和牛を考える会③

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2023年12月13日

③生菌剤について
生菌剤の使用目的は、腸内細菌叢のバランスを整えることです。その使用方法について面白い内容が2つありました。

1つは妊娠中の生菌剤投与です。ヒトにおける研究内容でしたが紹介します。
胎子は経腟で娩出されることで親から腸内細菌叢を得ます。
しかし帝王切開で娩出されるとそれを得ることができず、経腟分娩の子とは異なる腸内細菌叢となってしまいます。そこへ抗生物質を投与すると、帝王切開の子ではさらに腸内細菌叢のバランスが崩れてしまいます。
ただし、分娩前の妊婦さんに生菌剤を予め摂取してもらったところ、経腟分娩の子と帝王切開の子での腸内細菌叢の違いがほぼなくなり、抗生物質を投与してもバランスが崩れることはありませんでした。

2つめは抗生物質治療前の生菌剤先行投与です。
実験的に生後から1週間、抗生物質と生菌剤を同時に投与すると、いわゆる善玉菌はなくなり悪玉菌が3割以上占めるようになってしまいました。
しかし生菌剤を予め2週間投与すれば、その後1週間抗生物質を投与しても腸内細菌叢の変動幅が少なく、悪玉菌を減らすことができました。

以上2つどちらの内容からも、予め生菌剤を与えておくと、腸内細菌叢のバランスが抗生物質の影響を受けにくいことがわかりました。
下痢したら生菌剤ではなく日頃から少量ずつ与えたり、特に下痢や肺炎が流行りやすく治療が多い月齢がわかればその前から生菌剤を与えたりして、抗生物質投与に備えることが大切です。
 
 
 
今週の動画
種牛の鼻環

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