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加地永理奈のコラム
冬の温水給与

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2023年12月20日

先週末、那須は雪が降りました。それまでは気持ち悪いほどの暖冬ぶりでしたが、雪の日を境にしっかりと気温が下がり、クリスマス前にようやく冬らしさを感じています。タイヤ交換が間に合って良かったです。

冬の時期、牛さんの飲み水を温水にしているところは多いでしょうか?
氷が張った水槽から、きれいに氷を口でくわえてよけて水を飲む牛の動画をみたことがあります。

牛の飲水量について、繁殖和牛では1日30L、搾乳牛では100L以上も水を飲んでいるそうです。
その水は成牛では第一胃に入っていきます。
成牛の第一胃内温度は、体温より少し高い39℃前後になっています。これは第一胃内の微生物が活発に働ける温度であり、食べた飼料を効率よく発酵分解してくれます。
しかし飲水により、第一胃内の温度は一時的に下がります。
実際に測ったデータでは、飲水のたびに1-2℃下がっているようです。そして冬場でその飲み水が冷たいと、第一胃内温度はもっと下がり30℃近くになっていました。
第一胃内温度が下がってしまうと、微生物の働きも低下し、飼料の発酵分解も遅くなり、その牛は飼料摂取量が減ってしまいます。また温度を上げるためにもエネルギーを要してしまいます。

第一胃が未発達の子牛も同様です。
子牛が飲んだ水は第四胃に入っていきますが、その水が冷たいと近くの腸管も冷やされます。腸内にも免疫機能に欠かせない細菌叢があり、冷えによってその機能は低下してしまいます。
そもそも牛は10℃以下の冷水をあまり好まず、冷たい飲み物を好んでがぶがぶ飲むのは人間くらいらしいです。
成牛が食べた飼料を消化するためにも、子牛の脱水を防ぐためにも、飲水量の確保は必要です。冬場の飲水量と水の温度、一度確認してみてください。
 
 
 
今週の動画
バナナフット

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