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藤﨑ひな子のコラム
繁殖データ⑮~JMR~

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2023年12月8日

 12月となり、忘年会シーズンですね。今年度はコロナの規制も緩和し久しぶりの忘年会、という方も多いのではないでしょうか?私も農家さんの忘年会にお邪魔したりして、忙しい中でも楽しいひと時を過ごしています。皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

 前回のコラムでは、分娩後の母牛の休息期間であるVWP(自発的授精待期期間)についてご紹介しました。今回のコラムでは、VWPをもとに算出する「JMR」についてご紹介します。

 JMRとは、フランス語で「Jours (日) Moyen (平均の) Retard (遅れ)」という意味で、牛群の受胎が理想値からどのくらい遅れているかを表す指標です。JMRは、分娩後の日数からVWPを引いた日数(JMRペナルティー)の合計を平均化したもので表されます。任意に設定したVWPを過ぎると「ペナルティー(JMRペナルティー)」が加算され、妊娠を確認したらペナルティーは0になります。つまり、JMRペナルティーは妊娠の遅れによってもたらされる「経済的損失」を意味し、一般的に妊娠が1日遅れるごとに経産牛1頭あたり約1500円の損失とされています。

 例えばJMR(JMRペナルティーの平均値)が30日の繁殖農家さんがいたとします。経済損失1500円/日・頭とすると、経済的損失は30日×1500円×50頭=225万円となります。つまり、牛群の受胎が理想より30日遅れることで、年間225万円の経済損失が生まれることになります。

 このように、JMRは長期不受胎牛の成績も含む繁殖成績の管理指標として有用です。また、JMRを計算することで、繁殖管理の潜在的な経済的損失を把握することができ、繁殖管理の具体的な目標となるのではないでしょうか。

 今回のコラムでは、具体的な経済損失を計算することができる「JMR」という指標についてご紹介しました。現在の繁殖管理でどのくらいの経済的損失が生まれているのかを計算することは、言い方を変えると、繁殖管理を改善することでそれだけの利益が生まれるということです。今一度、現在の繁殖成績を見直してみませんか?
 
 
 
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種牛の鼻環

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