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藤﨑ひな子のコラム
繁殖データ⑭~VWPの設定~

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2023年12月1日

 いよいよ12月に入りました。「師走」。獣医師も走り回る1カ月となるのでしょうか、、、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 前回までのコラムでは、繁殖成績の改善として、受胎率や妊娠率・発情発見率についてご紹介しました。今回のコラムでは、効率のよいサイクルで繁殖を回すために重要な「分娩後何日で初回授精を実施したか」「初回授精後何日で受胎したか」の指標となる「VWP」についてご紹介します。

 VMPとは、「Voluntary (任意の) Waiting (待機する) Period (期間)」、日本語では「自発的授精待機期間」と表現されることもあり、分娩後の母牛に対して意図的に授精を行わない期間を示します。なぜ意図的に授精を行わないのでしょうか?それは、分娩後に子宮や卵巣の回復を待つためです。

 以前のコラムで、ウシは21日のサイクルで発情を繰り返すと述べましたが、分娩後すぐにこのサイクルが再開するかというと、それは不可能です。妊娠・分娩によって子宮や卵巣は「疲れた」状態になっていますので、通常の発情サイクルを回すには、おおよそ40日の「休息期間」が必要なのです。この休息期間がVWPで、この期間は農家さんが自由に設定できます。一般的には40日~80日程度に設定されていると思います。

 VWPを設定する意義は「メリハリある授精戦略のため」です。例えばVWPを意識していない場合、分娩後30日で授精してしまったり、分娩後100日以上が経過しているのに授精していなかったりといった事案が発生します。早すぎる授精は受胎率の低下(=授精したのに受胎しなかった)を招くこともありますし、遅すぎる授精は妊娠率の低下(=発情見逃し)を招きます。一方、VWPを設定している場合ですと、VWP付近は注意深く観察して発情発見率を向上したり、VWPを過ぎても発情がみられない場合は繁殖を担当している獣医師に相談したり、と適切な繁殖管理が行えるのです。

 今回のコラムでは分娩後の母牛の休息期間であるVWPについてご紹介しました。休む時は休む、授精適期になったら戦略的に授精する、というメリハリが大切です。このVWPを繁殖改善のため、一つの指標として覚えていただけると幸いです。
 
 
 
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診断や原因の追究は大切

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