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戸田克樹のコラム
第412話「人為的シコリ その2」

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2023年10月19日

まずはこちらの写真をご覧ください。

肩のあたりに少し盛り上がった何かがあります。触ってみると固く、皮膚と一緒に動きますので筋肉ではなく皮下にある物体のようです。

これ、実は注射痕と呼ばれる注射によってできたコブなのです。注射薬の中には吸うときや注入するときに力が必要な硬い薬剤があり、その注射によって写真のように腫れることがあります。また、同じ場所に繰り返し注射をし続けていると、徐々に腫れてきて気づけば腫れが大きくなってしまったというケースもあります。写真の場合は皮下にできたものなので、枝肉にする際に皮膚とともに除去されます。しかし、もしも注射痕が筋肉内にできてしまった場合、そこは瑕疵となり、除去されてしまいます。

これが人為的に発生させてしまうシコリです。注射によるシコリを予防するために、①基本的には筋注より皮下注射を選択する②同じ場所に何回も注射をしない③皮下に多量もしくは複数種の薬剤を注入しない④薬剤の長期投与が必要な場合は静脈注射を選択する、といった対策が必要です。また、頸部に注射を投与すると腫れやすいため、筋注にしても皮下注にしても肩部にするのが良いですね。複数日に渡って注射をしなければならないときは、今日は右、明日は左というように交互に投与するのもよいと思います。③については、複数の薬剤を注入してしまうと組み合わせによっては結晶化したり沈殿物ができたりすることがあるため、お勧めしません。④のように静脈注射であれば量が多くても問題はないですし、延長チューブを利用すれば複数種類の薬剤を投与できるメリットもあります。静注も続けていれば血管炎が生じて腫れることはありますが、その発生率は低いです。注射という行為は刺して薬剤を入れるだけですが、注射痕を発生させないために、注射の仕方、注射薬の選択、注射法の選択など、さまざまなことに注意を払わなければいけません。たいへんですね!(;^_^A

 
 
 
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