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松本大策のコラム
生産性を阻害する要因(病気)を抑える(8-2)

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2012年5月7日

- 第8章 下痢について考える その2- 下痢をむやみに止めない

 下痢を見つけるとすぐに止めてあげたくなるのが人情ですよね。でも、下痢をむやみに止めるとかえってやっかいなことが起こることがあります。まず、下痢はどうして出るのか考えてみましょう。
 食中毒や腸炎で下痢が出る場合、ばい菌やばい菌が出す毒素が腸の中にあふれてきます。この毒素は、放っておくと牛さんの身体のいろんな場所に障害を起こすのです。たとえば、肝炎を起こしたり、腎不全を起こしたりするわけです。
 だからこそ、牛さんは一刻も早く、これらのばい菌や毒素を腸管内から出したい。そこで、「下痢」という手段を使って体外に速やかに出してしまおうとするのです。
 これは、毒物などで起こる下痢も同じ事です。とにかく「下痢で早く体外に出した方が、全身が安全だよ」という身体の防衛反応なのですね。

 ところが、この下痢を止瀉薬などで止めてしまうと、ばい菌や毒素の排泄が遅れて、肝不全とか腎不全を起こして死に至る場合がある、というわけです。
 昔、O-157による下痢の対処法が確立されていなかった頃、多くの病院で「下痢を止めて」しまったために、腎不全を起こしてたくさんの方が犠牲になりました。最近、そういう話題を耳にしないのも、治療法が確立して抗生物質などでばい菌を殺しながら、下痢は止めないで早めに毒素を排泄させるという治療法が確立したからなのです。

 皆さんも、下痢の場合、本当の単純性下痢だと診断がついている場合以外は、安易に下痢止めを使うのではなく、原因をたたくようにした方がよいですよ。

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