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加地永理奈のコラム
繁殖和牛でも代謝プロファイルテスト②

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2023年10月4日

・エネルギー不足
・ストレス
・飼料の品質
・飼料の炭水化物とタンパク質のバランス
・太りすぎ、痩せすぎ

前回も列挙した飼養管理によるこれらの問題点は、肝機能の低下にもつながり、様々な面から繁殖成績を低下させます。
エネルギー不足を例にお話します。

エネルギーが不足すると、血糖値(グルコース)が低下し始めます。
グルコースと連動して、脳から出る繁殖関連ホルモンの分泌が落ち、繁殖成績が低下します。
それだけでなく、グルコースは脳にも重要なエネルギー源であるため、体内ではグルコースを下げないために様々な反応がおこります。
その1つが体脂肪の燃焼です。
体脂肪は遊離脂肪酸 (NEFA)となり肝臓に運ばれてエネルギーとなります。これにより一時的にエネルギー不足が解消されますが、脂肪を燃焼させるとケトン体(βヒドロキシ酪酸(BHB)等)が生産されます。
ケトン体が増えた状態はケトーシスといい、乳牛では明らかな食欲不振等の症状を示しやすいのですが、繁殖和牛は症状がほとんど出ないことが多くあります。
しかし実際には分娩後の子宮回復が遅れたり、泌乳中であれば乳質が悪化して子牛の下痢発症の引き金となっていたりします。

代謝プロファイルテストでは、健康そうな母牛でも実はこのような血中の変化が起こっていないか、起こっている場合はどの時期の母牛か、数値から確認します。

分娩前の母牛は特にエネルギー不足に陥りやすいです。
・分娩前の母牛の栄養状態により初乳量や初乳成分が減少すること
・妊娠末期の母牛の低栄養は、子牛の胸腺委縮など免疫形成に悪影響を及ぼすこと
が報告されています。

 
 
 
 
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