2023年9月28日 肺炎が多い、下痢が多い、発育が悪い、分娩事故が多い、受胎率が低い、牛が大きくならない・・・などなど、それぞれの牧場が抱えている問題点は様々です。 私たち獣医師は農家さんの「困った」を解決するために奔走します。個体ごとの治療を行うのはもちろんですが、「その原因は何だろう」と常に考えるようにしています。たとえば肺炎や腸炎といった病気の原因には細菌やウイルス、寄生虫といった病原体が関わっていることが多いのですが、それがなぜ蔓延してしまうのか、なぜ治りが悪いのかといった課題については「隠れた真の原因」を探っていく必要があります。 そもそも牛の栄養状態は良好か、エサの量は足りているか、給与時間や間隔は一定か、飼料や敷料の状態は良好か、ワクチン接種が適正に実施されているか、分娩前に増飼いはできているか、分娩室は衛生的か、群密度があがっていないか、など、問題の裏にはさまざまな要因が隠れていることがあります。私たちが普段の生活であまり体調を崩さないことと同じように、牛さんも普通に管理されていれば特に問題は起こりません(この普通が難しいのですが・・・)。薬剤をいろいろと使って治していくのも大切ですが、やはり日々の管理が適切に行われているかが治癒率向上には大切ですし、それが牧場内の「困った」を減らすことにもつながります。 もし牧場内に困りごとが出てきたときは、目の前の個体の治療に一生懸命になるだけではなく、その裏に隠された本当の原因が何なのかについても探求してみてはいかがでしょうか。 前の記事 第409話「夏の始まりは熱中症から⑧」 | 次の記事 第411話「人為的シコリ その1」 |