(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第748話:初乳についての勘違い??

コラム一覧に戻る

2023年9月26日

やっと世の中が涼しくなってきて秋の気配を感じるようになってきました。本当に今年は暑くて暑くてまいりました。

初乳の構成成分を簡単に表すと、以下のようになります。

初乳のカードにはカゼインタンパク質と脂肪が多く含まれています。このカードが第四胃で形成されることが非常に重要であると小生はず~~~と思っていました。もちろん、カード形成は大事なのですが、意外なことにIgGの吸収という面ではカード形成が不利な面があります。

・ カード形成による初乳の第四胃以降への初乳移送時間の延長
・ カード形成による初乳のIgG吸収効率の低下

つまり、カードが第四胃内で形成されることで、カード内にあるIgGが小腸へ進むまでに時間がかかり、さらに吸収効率が下がることが報告されています。

世の中には多くの初乳製剤があります。その中にホエーとカードを分離し、ホエーだけを濃縮した初乳製剤があります。

不覚にも小生は何故ホエーとカードをわざわざ分離しているのか知りませんでした。ただ単に「溶けやすい」という利点だけしか理解していませんでした。逆にカードを形成しないので、効果が低いのではないかと思っていました。すべてイメージで勝手に判断していました。

実は濃縮ホエー初乳はIgGの含量が多く、カード形成がないことから第四胃を速やかに通過して小腸に移送され、IgGの吸収効率を高めます。また、きれいに溶解できることも吸収効率を上げます。うまく溶解できていないと吸収効率が下がりますので、きれいに溶解することは非常に重要です。さらには生理活性物質であるラクトフェリンやIGF-Ⅰも多く含まれています。

何と、初乳の吸収効率を上げ、溶けやすくし、生理活性物質を多く与えるために、わざわざ手間暇かけてカードとホエーを分離していたのです。

おそらく多くの獣医さんが当然のこととして知っているだろうし、当たり前すぎる内容だと思うのですが、小生、長い間現場の獣医師をやっていましたが、考えたこともなかったし、知らんかったっす。

まだまだどっさり知らないことがあります。日々人の話を良く聞き、勉強し、広い視野をもてるように頑張りたいと思った次第です。
 
 
 
 
今週の動画
皮膚糸状菌症

|