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戸田克樹のコラム
第406話「夏の始まりは熱中症から⑤」

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2023年8月31日

~熱中症牛を見つけたら~
パターン①「直接冷やす」
まずは直接冷やす方法について紹介します。「何をいまさら」という声が聞こえてきそうなほどに当たり前な考え方ですね。熱中症の牛を見つけたら、まずは牛を部屋から出して風通しのよい日陰に移動させます。そして、蛇口をひねってたっぷりと水をかけてあげます。もし、立てないほどにきつい状態であれば、敷料がもったいないし部屋も水浸しになりますが、牛のいる部屋の中で水かけを行うしかありません。水をかけるときにもポイントがいくつかあります。

ポイント①あまりに冷えた水を突然かけない
体を冷やすんだからキンキンに冷えた水をかけてあげた方がいいのでは?と思うかもしれませんが、あまりに冷たい水をいきなりかけると、急激に体表の毛細血管が収縮したり、反射的に呼吸がしずらくなったりして体に負担がかかる場合があります。まずは水道水を使って体を冷やしていきましょう。そして、しばらくしてから氷水をかけてあげるとよりはやく体温を下げることができます。もちろん、水道水をかけ続けるだけでも十分下がる場合もあります。

ポイント②少し呼吸が落ち着いたくらいでやめない
水をかけていると、体を揺らしながら行っていた呼吸が落ち着いてきたり、目つきがよくなってきたり徐々に牛の様子もよくなってきます。しかし、そこで中途半端に水かけを止めてしまうと、深部にたまった熱がまた熱中症を引き起こしてしまう可能性があります。呼吸様式だけでなく、体温計で体温を実測して平熱にまで戻ったかどうかまで確認してあげてください。

ポイント③扇風機やタオルで乾燥まで
十分に体を濡らしてあげたとしても、そのまま放置するのはあまりよくありません。水が「フタ」の役割をしてしまい、熱が体表にとどまってしまう可能性があるのです。水は乾くときに熱を奪ってくれますので(気化熱)、扇風機をあて続けると乾燥と冷却のダブル作用が期待できます。扇風機を当て続けることができない場合はしっかりと吹き上げて、体内の熱がこもらない状況を作ってあげてから部屋に戻してあげてください。

つづく
 
 
 
 
今週の動画
【病気】おへそから何か出てきました

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