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加地永理奈のコラム
直腸内に氷

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2023年8月23日

熱中症になってしまった牛の応急処置として、冷水をかけて体を冷やすこと、氷水や冷たい電解質を飲ませることなどをお願いしています。
いくつかの農場では、直腸内に氷を入れて牛の体を冷やしていると伺いました。今回はこの方法についてお話します。

冷やすとき、太い血管を冷やすことで全身に冷えた血液が巡り、効率よく全身を冷やす効果が期待できます。そのため人でも、首元や股関節といった太い血管が見える箇所を冷やします。
体の中で一番太い静脈は、後大静脈といって背骨に沿って走っています。ここを冷やすのが、直腸内を冷やす方法です。
直腸内にホースを挿入し、冷水を注水します。
最も牛の体温を下げやすい方法ですが、直腸粘膜を傷つけないように、直腸内温度が下がりすぎないように、(糞便を浴びないように、)牛の状態を注意深く観察しながら行う必要があります。

そして農家さんに教えていただいたのが、直腸内に冷水を注入する代わりに、細長い氷を差し込むという方法でした。
熱中症の子牛にネッククーラーを巻いてもすぐ取れてしまう、というご相談も受けていたので、これは解決策の一つになるかもしれない、
ということで、某100円ショップに行くと、水筒用として細長い氷を作るグッズがいくつか売られていました。

これで人の指程度の細長い氷が作れます。子牛の直腸内に1本がちょうどいいでしょう。
成牛に使用できそうなもっと太い氷を作れるものも売られていましたし、細長い風船の中に水を入れて凍らせている農場もありました。

ただこの方法で注意していただきたいことは、体温が急激に下がりやすいことと、直腸粘膜が傷つきやすいことです。
氷の直腸内挿入はあくまで体温が下がりにくい時の応急処置として活用していただき、その前に飲水や水浴び、扇風機など安全な方法から試してみてください。
 
 
 
 
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