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蓮沼浩のコラム
第743話:牛のサルモネラ症

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2023年8月22日

小生が今一番注意している疾病は何かといいますと・・・

牛のサルモネラ症になります。
主に北海道で広がっており、牧場に大きなダメージを与えています。

サルモネラ・ダブリンとサルモネラ・ティフィムリウムが重要です。特にサルモネラ・ダブリンは病原性が強く牧場に入ると非常に厄介です。

令和3年は全国で67戸の発生戸数だったのですが、令和4年には192戸と約3倍近くに増えています。令和5年はさらに発生ペースが上がっています。要注意です。

小生が一番問題だと考えているのは、サルモネラ症の牛さんの診断が経験のない獣医師では遅れてしまいやすいということです。

小生は肉用牛の獣医師なので乳牛ではなく肉用牛での特徴を箇条書きにしてみますね。

・ 哺乳期の子牛に主に発生する
・ 肥育牛の発生報告は小生の調べた範囲ではない
・ 高熱(40℃以上)が出る
・ 酷い場合は41℃を超える高熱が出る
・ 治療の反応がとても、とても悪い
・ 治療してもすぐに死亡する症例がいる
・ 群全体に広がり、治療頭数および死亡頭数が急増する
・ 下痢をするが、下痢便の状態は様々
・ 死亡しなくても著しく削痩し、回復が悪い
・ 症状が出ない不顕性感染の牛がいる

非常にざっくりとした特徴ですが、牛RSウイルスなどが広がった場合とは違い、とにかく治療の反応が非常に悪いです。

しつこいですが、特徴をまとめると・・・

哺乳子牛で、治療しても治りが悪く、群全体に広がり、なおかつ死亡例が複数頭出る。
死亡する牛の中にはあっという間に死亡してしまう牛もいる。

牧場で治療をしている時にもしもこのような特徴がみられた場合は、サルモネラ症を思い出して検査することが重要です。そして、速やかに対策をとることが重要になります。

本州や九州などでは発生報告は少ないですが、今後知らない間に感染が広がる可能性があります。外部からスモール子牛を導入したり、人工哺育をしたりしている牧場は特に注意が必要なので、頭の片隅に入れておいてくださいね!
 
 
 
 
今週の動画
子牛の誤嚥と哺乳乳首チェック

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