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戸田克樹のコラム
第404話「夏の始まりは熱中症から③」

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2023年8月17日

前回はすぐに対処した方がいい場合の基準をいくつか紹介しました。それぞれ少し掘り下げて考えてみましょう。
①体温が40℃近い、もしくはそれ以上ある
やはり検温は大切です。呼吸が速くても、体が揺れていても、体温が平熱であればまずは大丈夫です。見た目ほど体温が上がっていないケースもありますし、逆に思ったより体温が上がっていて驚くケースもあります。いちいち保定して体温計を肛門に挿入するのは手間ですが、実測に勝るものはありません。気になったら検温をぜひ実施してあげてください。

②起立欲がない
人が近くにいっても立とうとしないときは、やはり「相当きつい」状態であると思われます。そもそも「牛が立たない」ときは骨折、膀胱破裂、急性ルーメンアシドーシス、脊椎損傷など、重症例が多いですよね。中には人慣れしてただボーっとしているだけの場合もありますが、「呼吸が速い」「体が揺れている」といった熱中症を思わせる様子にさらに「立たない」が加わったときは危険度が高いと思われます。

③開口呼吸・ベロを出して呼吸している
犬は暑いとよくベロを出して呼吸します。ベロからも放熱しますし、呼吸数を上げることで体内の熱を外に逃がそうとしています。ただ、牛の場合はこうした呼吸様式はあまりよくありません。というのも「そうしないといけないくらい呼吸がきつい」状態を示しているためです。牛が口を開けて呼吸をしているのはよほどの状態なのです。重度の肺炎牛でも同様に開口呼吸やベロを出して呼吸をしますが、自然な呼吸が難しいために口を開けないと空気を吸えない状態になっているのです(私たちも全力で走った後に思わず口呼吸しますよね。)。

④涎が口の周りについている
普段から口の周りに涎がついている様子を見かけることはありますが、熱中症の場合はある程度まとまった量の涎が口の周りにつくことがあります。開口呼吸のせいでつねに口が半開きだったり、涎を飲みこめないほど呼吸数が増加したりするためにこうした現象が起こります。涎を飲み込む余裕もない状態・・・非常に恐ろしいです。

 
 
 
 
今週の動画
子牛の誤嚥と哺乳乳首チェック

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